加藤 いづみさん(歌手)
心の波にピトッと寄り添ってくれる
「どこかうれいのあるチワワの顔が大好き」という加藤さん。加藤さん自身も、チワワ顔と
いわれるとか=東京都大田区で(撮影・小河慶一郎)
十年前、何げなく立ち寄ったペットショップで、加藤さんは、隅のほうにいる物憂げな
目をした子犬が気になった。抱き上げると、子犬はその顔を、加藤さんに「ピトッ」と寄せた。
この瞬間、すべての迷いと懸念が吹き飛んだという。
「マンションはペット禁止、十五年は面倒を見なければいけない、旅行もできなくなる…。
でも、そんなことがなに!?って思いました。衝撃的な出会いでしたね」
●名前は曾祖母から
まだチワワが人気になる前のこと。加藤さんは、その子犬がチワワとも知らなかった。
モンという名は、「大切に思っていたひいおばあさんの名をもらいました」
最初の直感通り、モンの世話もしつけもまったく苦にならなかった。
「家に帰ってモンと遊ぶのが楽しかったですね。でもやはりペット禁止マンションにいると、
ほえ声などに神経を使ってしまって。一年ほどでペット可マンションに移り、妹分のベルも
買ったんです」
“初めての子”のモンは、やや神経質。それに比べ、ベルは自由奔放で、気も強い。
「ツアーから帰ってくると、モンは、『抱っこ抱っこ!』と素直なのに、ベルは、『なんで
留守してたのか説明しなさいよ!』と問い詰めるような感じでフニャフニャすねるんです。
オンナですよー」
加藤さんが結婚したときも、女の子のベルは、ご主人にすぐなついたとか。
でも、慰め上手なのは、やはりお兄さんのモン。
「私が落ち込んで泣いたりすると、いつもピトッとくっついて、ペロッと顔をなめてくれるんです。
人の心の波長が分かるみたい。イヤなことがあると、なんでもモンに話して、スッキリ。
でも休日など、ずっと犬に話しかけているので、ワタシ、ちょっとヤバイかも」
●スタジオにもお供
加藤さんのレコーディングにも、犬たちはお供する。
「レコーディングには一カ月半ほどかかるんですが、犬がいるとみんなの気分をなごませて
くれるので、プロデューサーが、連れてきて、って。週一、二回は、犬たちもスタジオで
“おつとめ”です。煮詰まると、犬と散歩して気分転換して」。まさに、セラピー犬のようだ。
十歳になるモンは心臓が弱く、数年前はヘルニアにもなり、ずっと薬を飲んでいる。
「みんなにはかわいいね、といわれるんですが、時々ふと、疲れた老犬の顔を見せることが
あるんです。ああ、おじいさんになったんだなあって。モンには長生きしてほしい、でも同時に、
楽しく生きてほしい。体が弱っても散歩に行きたがるうちは、なるべく連れていってあげたい
ですね」
いとしい気持ちを歌うとき、加藤さんは愛犬たちのことを思って歌っている。
(文・宮晶子)
TITLE:東京新聞
URL:
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hellopet/20060809/ftu_____hellopet000.shtml