2006/08/08
社会保険庁による国民年金保険料の不正免除問題で、社保庁が
最終報告をまとめた。本人に無断で納付を免除・猶予する手口とは
別に、長期未納者を行方不明の「不在者」扱いにし、約十万人分を
不適正処理していたことが新たにわかった。
社保庁の不祥事、不正が次々明らかになってきたが、ここまでくる
と「底無し」というほかない。この最終報告が本当に全体像なのか、
と疑いたくもなる。
年金保険料の不正免除は、今年五月ごろから大阪府や三重県な
どの社会保険事務所で相次いで発覚した。加入者本人に無断で、
免除や猶予の手続きをしていた。保険料が払えない経済状況の場
合に適用される制度を悪用して未納入者数を減らし、見かけ上の納
付率を上げる工作だった。
不正免除はその後全国へ広がり、三十七都道府県で約二十二万
人分が不正に処理されていた。全国の社会保険事務所のうち約四
割が不正に関与していた。今回の不在者処理などを合わせると、悪
用された人の総数は、実に三十数万人にも上る。
本庁職員の関与については、有識者らによる厚生労働省の検証
委員会が「なかった」と結論づけた。これは「証拠がなかった」と見る
べきなのかもしれない。全国の社保事務所が、これほど大規模に
行っていた不正を知らなかったのなら、逆に監督責任こそが厳しく
問われねばならない。
年金納付率は、二〇〇二年度に過去最低の63%まで落ち込ん
だ。社保庁は、〇七年度には80%まで上げる目標を掲げて現場
に指示している。“ノルマ達成”のため手っ取り早く不正処理に走っ
たという構図だ。公務に携わる者として、その法令順守意識の低さ
はあきれるばかりである。
不祥事にまみれた本庁、不正処理に走る下部組織。それを統括
できなかった社保庁は、機能不全状態といってもいいだろう。
最終報告に併せ、村瀬清司長官は、二千人規模で職員の停職
を含む処分を行うと表明した。国民が納得する厳しい処分にして
こそ、再出発の第一歩を踏み出せるのだという厳しい覚悟を求め
たい。
先の国会では、年金業務を継承する「ねんきん事業機構」に改
編する社保庁改革法案の審議中に不正免除問題が広がり、継
続審議となった。与野党を通じ「解体的出直し」の声が高まったに
もかかわらず、厚労省の「特別の機関」というあいまいな位置付
のままになっている。
国民年金への信頼を取り戻す意味でも、次期国会では、法案を
練り直すぐらいの活発な論議を重ねるべきだ。
そーす
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0000085583.shtml