大阪市淀川区のマンション一室を事務所に利用していた山口組系暴力団が、
住民らの苦情や大阪地裁に申し立てた仮処分申請などを受け、自主的に
撤退していたことが分かった。
府警などによると、この暴力団は山口組傘下の4次団体。組員は約10人で、
債権回収などをしていたとみられる。マンションは平成4年3月に建築され、
9階建て48戸。事務所は7階にあった。16年10月から、1カ月15万円の
賃貸料で2年契約していたが、実際の契約者は組員ではない女性の名前だった。
今年4月、「目つきの悪い男たちが何人も出入りしている」と住民がマンション
管理会社に申告。家賃数カ月分の滞納もあり、管理会社と弁護士が居住者
立ち会いのもと室内を確認したところ、内部に組を示す看板や机などがあり、
組事務所として利用している実態が判明した。
同マンションは暴力団や暴力団関係者の利用が発覚した場合、契約解除とする
特約事項を設定。このため、管理会社が室内の調査結果や写真などを添えて
明け渡しを求める仮処分申請を地裁に申し立てたところ、今月6日に認められた。
地裁の決定を受け、執行官と弁護士らが訪問したところ、机や椅子(いす)のほか、
組の看板、カーテンなどすべてが室内から撤去され、もぬけの殻だった。
居住者は「暴力団関係者の存在に気づき転居した家族も数世帯あったが、
出て行ってほっとした。ただ、またこないかという不安もある」と話す。
大阪府警は「勇気ある行動で暴力団を追放した理想的なケース。
臆(おく)せずに声をあげてほしい」と呼びかけている。
■「怖がらず相談を」協力求める警察
暴力団新法施行後、看板を表に掲げる組事務所が減り、暴力団の実態が把握
しにくくなった。仮に住民が気が付いても、恐怖は強く、相談できないまま転居して
しまう住人も多く、警察や管理会社が端緒をつかみにくいのが現状という。
だが警察幹部によると、組員らの多くは賃貸マンションに住むケースが大半。
今回のケースのように実態が発覚すれば「契約違反」になることが多く、
仮処分などの手続きを踏めば、出ていかざるをえない。
本人が派手な服装をしていなくとも、訪ねてくる人物が明らかに暴力団風であったり、
見慣れない高級車が頻繁に止まっているなどささいな変化であっても、警察当局は
「おかしいと思ったらまず管理会社か警察に相談してほしい」という。
昨年6月には、大阪・ミナミの雑居ビル一室を暴力団が「情報誌の販売促進事業」と
目的を偽って賃貸契約していたことが商店組合の指摘で発覚、組員が詐欺容疑で
逮捕された。今月には大阪市内のマンションに入居した組長も身分を偽るなどしていたために
詐欺容疑で逮捕された。いずれも住人の通報が摘発につながった。
警察幹部は「住民を脅すなどしても暴力団側は摘発されるだけでメリットはない。
暴力団の情報を怖がらずに相談すれば、契約違反などで摘発し追放できる」と協力を求めている。
【2006/07/23 東京朝刊から】
http://www.sankei.co.jp/news/060723/sha039.htm