2006年07月13日20時27分
第135回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が13日、東京・築地の新喜楽で
開かれ、芥川賞に伊藤たかみさん(35)の「八月の路上に捨てる」(文学界6月号)が選ばれた。
伊藤さんの妻は直木賞作家で本紙書評委員の角田光代さん(39)で、夫が芥川賞、妻が直木
賞は初めて。直木賞は三浦しをんさん(29)の「まほろ駅前多田便利軒」(文芸春秋)と、森絵
都(えと)さん(38)の「風に舞いあがるビニールシート」(同)に決まった。三浦さんの20代での
受賞は通算4人目。副賞は各100万円。贈呈式は8月22日午後6時から、東京・丸の内の東
京会館で行われる。
伊藤さんは神戸市生まれ。早稲田大卒。主に長編小説や児童文学を発表してきた。「ぎぶそ
ん」で昨年の坪田譲治文学賞。芥川賞は133回から3回連続で候補になった。記者会見では
「芥川賞は遠い賞だったので驚いています。自分がいただいていいのか、実感がわきません」
と語った。
会見場に現れた角田さんは「とても大きな賞なので、同じ作家として良かったです」と話した。
受賞作は、自動販売機の清涼飲料水のルート配送のアルバイトをする脚本家志望の男性が、
30歳を目前に離婚することになった妻とすれ違うようになるまでを、軽妙な会話をまじえて描く。
選考委員の高樹のぶ子さんは、「若者の生活疲れや切なさがテーマで新しい。いまの社会
構造や経済状況が若者たちに影響を及ぼしていることを表している。報われない若い生活者
の感覚を強く感じた」と評価した。
三浦さんは東京都生まれ。早稲田大卒。「むかしのはなし」で前々回の直木賞候補に。受賞
作は、東京西郊の街で便利屋を営む「多田」のもとに高校時代の同級生「行天(ぎょうてん)」
が転がり込み、犬を預かったり、塾帰りの小学生を家まで送ったりという仕事をしながら、街の
問題を解決していく。
森さんは東京都生まれ。早稲田大卒。児童作家として出発し、「つきのふね」で98年の野間
児童文芸賞。「いつかパラソルの下で」で前々回の直木賞候補。会見では「デビュー15年の切
れのいいところで大きな賞がいただけて良かった」と話した。
受賞作は、けなげに生きる人々を温かいまなざしで見つめた短編集。表題作では、寄る辺の
ない難民たちのために尽くし、命を失う国連職員と、彼の元妻との、心のきずなが描かれてい
る。
選考委員の井上ひさしさんは「三浦さんの作品は軽やかでテンポはいいが、子は親を選び直
せるのかという思想的な問題をとらえている。森さんは、絶えず読者の前で学んで上に伸びて
いこうとする姿勢が見えた」と評した。
ソース:asahi.com
http://www.asahi.com/culture/update/0713/021.html