災害現場における多数の負傷者への対応など、厳しい訓練・研修を重ねた県立大船渡病院の医療スタッフ五人が、
災害時派遣医療チーム「岩手DMAT」を発足させた。津波・地震などの自然災害や大規模な交通事故が発生した際、
厚生労働省などの派遣指示を受けて現場に急行し、負傷者に対応。今後も有事に備えて訓練を重ねるほか、
研修で学んだノウハウの普及に力を入れることで、気仙地域における災害医療の充実を図りたい考えだ。
岩手DMATを発足させたのは、大船渡病院脳神経外科の山野目辰味医師(隊長)、外科の村上雅彦医師、
心肺蘇生推進委員会に所属する臼井直樹看護師、救急センターの入澤美紀子、熊澤義子両看護師の計五人。
五人は十四日まで五日間の日程で、東京都立川市にある独立行政法人国立病院機構・災害医療センターなどで
開かれたDMAT隊員養成研修を修了した。
訓練では東京消防庁のハイパーレスキュー隊員と瓦礫の下で医療訓練を行ったほか、
自衛隊ヘリコプターを使って医療処置を行いながらの患者搬送も。災害地域外に患者を空輸する場合の対応なども確認し、
現場に即応できる体制を目指して体力的にもハードな内容が続いた。
災害によっては、短時間で数百人の負傷者が出ることが想定される。現地では医療スタッフの不足が予測される中で、
隊員は患者への処置だけでなく、重症度に応じて患者の対応、優先度を判断する「トリアージ」が重要になるとされる。
また、最大で四十八時間程度災害現場で活動することもあり、隊員自らの安全や体調保持も重要。
指示をやり取りする情報端末の整備など、隊員に求められる準備も多岐にわたっている。
基本的には厚生労働省や各都道府県などからの要請によって出動するが、緊急時は各DMATの判断で自発的な活動もできる。
岩手DMATでは大規模な津波・地震によって気仙で多数の負傷者が出た場合も想定し、
いち早く現地に急行できる体制整備を進めている。
厚生労働省では数年前から全国に二百のDMATを整備しようと養成に力を入れており、
陸前高田でも震度5弱を観測した昨年八月十六日の宮城県沖地震時には、実際に出動したDMATもあった。
県内での組織編成はまだ珍しいという。
山野目隊長は「チームの編成は地域住民にとっても安心感につながるはず。災害有事の際にこうした体制があることを
広く知らせるのも、今後の我々の役割となるのでは」と話す。
入澤看護師も「五人が同じレベルで対応できることが求められるほか、災害現場では体力も必要で、やはり普段の訓練が大事。
トリアージ方法などは院内の救急医療でも応用できるため、研修での知識を院内に広く紹介したい」と話し、
今後の組織充実に意欲を見せている。
東海新報
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