韓国が勝った。
フランクフルトのFIFAワールドカップ・スタジアムは屋根で覆われていたが、
韓国代表選手の力強い意志まで覆い尽くすことはできなかった。
トーゴ戦の前日に会った選手たちは口を一文字に引き締めていた。
試合前に偶然会ったイ・ヨンム技術委員長も固い表情を崩さなかった。
イ・ヨンム技術委員長は「ワールドカップに楽な試合などあり得ない」と語った。
監督が去ればトーゴ選手の精神力がいっそう強くなることもあり得るとも語った。
サッカーで勝つ方法は三つ。終始一貫して嵐のように押しまくるか、
一歩一歩じっくりと前に進むか、守りを固めて稲妻のように相手ゴールに奇襲をかけるかだ。
ディック・アドフォカート、われわれに感激をプレゼントしてくれた男!
今大会で飛び出た2度目の逆転勝利。第1号の主人公はヒディンクで、第2号はアドフォカートだった。
韓国代表チームの前・現監督二人の指導者の性格は対照的だ。ヒディンクが線ならば、
アドフォカートは面。ヒディンクが細い筆で描く細密画家ならば、
アドフォカートは余白の美を生かす文人画家だ。ヒディンクが試合や選手の生活まで手を入れるとしたら、
アドフォカートは無言と表情で選手たちを動かす。二人ともカリスマ的な指導力を備えているのはもちろんだ。
韓国選手が非紳士的な反則で倒されれば席を蹴って立ち上がり、
荒々しい抗議をするのはまったく同じだ。しかし、ヒディンクの怒りが火山ならば、
アドフォカートのそれは重々しい地震だ。ヒディンクはアッパーカットで、アドフォカートはハイタッチだ。
そして、二人とも偽装戦術を使う。
ヒディンクは暴風のように見えるが、実は奇襲作戦を主な武器として活用し、
アドフォカートは皆が押し込むと予想した地点で耐えて間を置いた。
アドフォカートはそのように前半戦を戦った。大勝が目標ではなく、
僅差(きんさ)の勝利であろうと強敵と対等に戦いたいという強い意欲の表れなのだ。
大会組織委の手違いで2度流れた愛国歌(韓国国歌)は、劇的な逆転勝利の前兆ではなかっただろうか。
このとき、李栄杓(イ・ヨンピョ)はイギリス人の主審に流ちょうな英語で抗議していた。
初ゴールを決めるという約束を守った李天秀(イ・チョンス)は、
試合後のロッカールームでどんな表情をしているだろうか。
ワールドカップ3ゴール目を決め、
アジア選手最多得点の名誉を手にした安貞桓(アン・ジョンファン)は、
どのような次の目標を心に刻んだだろうか。
古代ローマ時代のコロシアムも、昨日のように暑い日には兵士らが皮の覆いをかぶせたという。
古代ローマ時代にはローマ軍団が絶対的な強者だった。
今日だけはわれわれが現代サッカーの絶対的な強者だ。われわれの行軍は今始まった。
チャン・ウォンジェ崇実大教授(前サッカー協会技術委員)
ソース:朝鮮日報
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/06/15/20060615000029.html