栃木県は、脳卒中の疑いがある患者を原則として県が選んだ
「脳卒中専門医療機関」へ運ぶ体制を敷いている。
ところが夜間や休日などに専門医不在で対応できず、
治療が遅れ患者が死亡する事態が起きている。
県は患者のたらい回しを問題視し、受け入れに万全を期すことを求める
文書を2月、各専門医療機関に送った。
同様のケースが全国で起きていないとは言い切れないのが実情だ。
県は04年2月に、県内19病院を「脳卒中専門医療機関」に選んだ。
選定基準は▽原則として専任の神経内科と脳神経外科の専門医を常勤で配置
▽脳血管撮影装置などがある▽救急患者を積極的に受け入れている実績がある−−などだ。
栃木県は脳卒中による死亡率が全国上位で、発症後の早い段階で
専門医療機関に患者を運ぶ体制を作るのが目的だった。
選定後間もない04年3月、自宅で頭痛を訴えて意識を失った
20歳代の女性が宇都宮市内の専門医療機関に運ばれた。
だが脳神経外科医は当直していなかった。
当直の内科医は脳神経外科医と電話連絡をとって、
手術不能と判断し、女性の入院を断った。
女性は他の病院でも断られ続け、発症後4時間あまりたってようやく、
独協医大病院(同県壬生町)に入院した。すでに脳死状態だった。
同医大の診断では、女性は小脳出血。
発症後2時間以内に手術をすれば、助かった可能性が高かった。
女性は生後8カ月の赤ちゃんを残し、入院7日目に亡くなった。
同医大には数カ月に1回は同様の患者が運ばれる。
昨年11月も、宇都宮市の別の専門医療機関に運ばれた患者が
「週末は脳神経外科医が不在で連絡も取れない」と断られ、転送されてきた。
手遅れで植物状態から回復できそうにない。
今年初めには、入院先決定までに八つの専門医療機関に断られた患者も現れた。
同医大脳神経外科の河本俊介講師は「生死にかかわる脳卒中の救急患者が
運ばれてくる病院である以上、24時間いつでも緊急手術に対応できる体制が必要だ。
患者はそうした病院へ運ばれたいのではないか」と訴える。
県医事厚生課は「専門医療機関が24時間受け付けるというのは『必ず受け入れる』という意味ではない。
限られた医療資源でやっていくしかない」と説明している。【鯨岡秀紀、大場あい】
■ソース
MSN毎日インタラクティブ-毎日新聞 [2006年5月13日 20時07分]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060514k0000m040052000c.html