≪農水省 検討会設置 “悪用”に歯止め≫
日本の「和牛」の精液を使い、海外で交雑し生産された牛が、「wagyu」として各国に輸出され
販売されている。「海賊版」和牛ともいえるもので、農林水産省は、和牛の遺伝資源(精液)を
知的財産ととらえ、保護する方策の検討に乗り出した。和牛遺伝子の海外での無秩序な使用を防ぐため、
和牛固有の遺伝子の特定も急ぐことにしている。
香港の繁華街・コーズウェイベイにある高級スーパーの精肉売り場で今月中旬、米国産、
カナダ産などの牛肉に交じり「wagyu」のステーキ用肉が並んでいた。
日本からの牛肉輸入を停止している香港で、日本の「和牛」が並ぶことはなく、
この「wagyu」は豪州産。表示の横には豪州国旗がしっかり張られており、
和牛特有のサシ(脂肪交雑)は、日本の「和牛」とは微妙に違ってみえる。
全国和牛登録協会(京都市)の吉村豊信専務理事は、香港の例を聞き
「すし、酒という一般名称レベルで『wagyu』と書いているのだろうが複雑な気分。
いろんな人が努力して作り上げてきたのに」と話す。
同協会は、約50年にわたって和牛の“戸籍”を管理してきた。協会によると、
和牛の遺伝子が海外に初めて出たのは昭和51年。黒毛和種と褐毛和種の雄各2頭が米国に輸出された。
その後、牛肉輸入自由化で米国への輸出が可能となり、平成10年までに約250頭の生きた牛と、
精液が輸出された。
豪州産「wagyu」は米国から輸出された和牛遺伝子を持っているとみられる。
日本のような登録制度がないため「和牛同士をかけあわせたか、交雑種なのか、
本当に和牛遺伝子が入っているのかも確認のしようがない」(協会)のが現状だ。
そうした「wagyu」の子牛は、すでに日本にも輸入されているとみられる。
農水省によると、和牛交雑の可能性がある肥育用子牛の輸入数は、平成17年に豪州などから
約2万3000頭あった。日本国内で「和牛」として売ることはできないが、
国内での肥育期間の方が長ければ「国産牛」として販売できる。
だが、和牛と海外のアンガス種などとの交雑種が「黒牛」として逆輸入されるケースもあり、
国内の生産者からは「黒毛和種の『鹿児島黒牛』と誤認されかねない」と危ぶむ声があがっている。
農水省は18日に、畜産関係者や国際特許の専門家などによる検討会を立ち上げ、
商標や「遺伝子特許」の取得などによって「和牛」の遺伝資源の保護や活用が可能かどうか検討を始めた。
今年夏までに遺伝資源の管理規制強化のガイドラインなどを示していく方向だ。
◆ソース:Sankei web
http://www.sankei.co.jp/news/060420/sha033.htm