鳥インフルエンザの影響で生鮮卵の輸入が急増、物価の優等生の「国産神話」が崩れ始めている。
平成17年は前年の11倍の約1万4000トンが輸入された。現在、加工用も含め、
8%が外国産とみられている。鳥インフルエンザの発生以降、消費が後退したため、
生産者が減産に踏み切り、その後、増産が間に合わなかったためだ。
生産者団体は「産地表示が厳格に実施されているか実態調査する必要がある」としている。
農水省などによると、生鮮卵の輸入量は過去10年以上、年間1千トンから2千トンで推移してきた。
それが17年は1万3784トンと、前年の1233トンから11倍も増えた。
輸入先は米国、オランダ、ブラジルの順だった。
生鮮卵の卸値はキロ当たりの100円から200円と、戦後から一貫して安定していた。
ところが16年1月、山口県で鳥インフルエンザが発生したことから、鶏肉や卵に対する不安感が広がり、
消費が減退し価格が低迷、価格維持のため生産者が減産した。実際は世界的にも鳥インフルエンザが
卵から感染した例はなく、安全性は確認されている。
その後、消費が上向きになり、価格が高騰した。しかし、鶏は孵化(ふか)して卵を産み始めるまで
半年かかるため、増産が間に合わず、加工業者などが輸入に切り替えた。
値段が高めでも新鮮な卵を安定して供給できるとして継続的に輸入が続けられている。
≪粉末、おでん…8%に≫
卵の国内生産量は246万トン(17年度)で、公式には国内自給率は95%とされている。
輸入もこれまではパンやマヨネーズ、ドレッシングなどに加工される粉末や液状のものが大半だった。
一方、生鮮卵の輸入には船が利用されており、保管状態が良好ならば数カ月保存できる。
日本養鶏協会の推計では、生鮮卵や粉末なども含めた輸入卵は全流通量の約8%に達している。
同協会専務理事の島田英幸さんは「再び鳥インフルエンザが発生した場合、相場が安定しないので、
その補完として輸入している業者も多い。すでに輸入が恒常化してしまった」とみている。
現在、スーパーなどで生鮮卵を販売する場合は産地表示が義務づけられているが、
おでんの卵やゆで卵、煮卵、卵スープなどは表示されていない。
島田さんは「消費者は外国産卵なんてと思っているかもしれないが、輸入ものが急速にシェアを拡大した
野菜の例もある。販売する際の産地表示を徹底してほしい」と話している。
http://www.sankei.co.jp/news/060409/sha009.htm