昨年十月、七十五年の歴史に幕を閉じた尾道市向島町のアイスキャンデー店「花月」の味を、
市内の主婦二人が復活させる。店を営んでいた女性に作り方の伝授を請い、製造機械などもそのまま継承。
四月上旬にも市中心部の十四日元町に店を開き、懐かしの冷菓を売り出す。
新しい店主は、佐原幸江さん(43)=栗原町=と石田千秋さん(43)=久山田町。
花月の店主だった木曽美代子さん(67)の親せきの佐原さんは、学生時代からアイスキャンデーに親しみ
、自分の子どもたちにも買い与えてきた経験がある。
「昭和初期から尾道に根づく甘味が、このまま消えるのは忍びない」。
佐原さんは昨年九月、十四年勤めた会社を退職。友人の石田さんを誘い、食品衛生責任者の講習を受講するなど
新装開店の準備を進めてきた。
花月は一九三〇年、木曽さんの義父勝さん=九一年に七十九歳で死去=が創業した。
砂糖や粉ミルク、香料などを混ぜて棒状の型に流し込み、冷凍してアイスキャンデーを製造。
夏の最盛期には千本以上を作った。
八六年から義父母に代わり木曽さんが店を切り盛りしてきた。当時、一本六十円。
以来、昨年の閉店まで値上げせず、消費税導入の際も「幼い子が一円玉を持ってくるのは大変だから」と据え置いた。
元気なうちに区切りをつけたいと家業を畳んだ木曽さん。
「たくさんの人に愛される店になってほしい」と、老舗の心意気を二人に託す。
新しい店の名は「あいすキャンデー屋」。飾らないスタイルを貫こうとシンプルにした。
花月にあったショーケースや製造機は丸ごと木曽さんから譲り受け、既に新店舗への搬入を終えた。
佐原さんは「昔と変わらず、子どもたちが気軽に来てくれるような雰囲気にしたい」、
石田さんは「人通りの多い場所なので観光客にも味わってほしい」。
春風そよぐ港まちにまた一つ、名物が加わる。(榎本直樹)
■ソース
中国新聞ニュース[2006年3月21日14時00分]
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200603210099.html