防衛施設庁が、今春の人事異動に合わせて予定していた出先機関の中堅幹部30人前後の早期勧奨退職を、
急きょ取りやめていたことがわかった。
同庁を舞台にした官製談合事件で天下り問題が批判されたことから、その背景にある慣習を断ち切るのが
狙いとみられる。“肩たたき”を控えたことで、新規採用者を削ったり、昇進予定を見送ったりするしわ寄せも生じている。
ただ、今夏のキャリア人事については対応は未定で、課題を抱えての再出発となりそうだ。
早期退職が取りやめになったのは、全国に八つある防衛施設局の課長や課長補佐ら。当初、4月1日付で
退職を打診されていた。国家公務員法や自衛隊法では定年は60歳だが、実際には多くの官庁で、
「出世レース」に敗れた同期入庁組が50歳代前半から肩たたきの対象となり、退職するのが一般的だ。
防衛施設庁でも毎年この時期になると、まず出先機関の30人前後が早期退職を打診され、
同庁側のあっせんで、所管の財団法人や民間企業に再就職していた。
2004年4月1日付では、施設局の筆頭課長級3人、課長級15人、課長補佐級8人など計32人、
05年の同日付で、施設局の筆頭課長級4人、課長級17人、課長補佐級5人など計30人が早期勧奨退職している。
今回の事件では、天下り先の確保を目的に建設工事などを巡って談合を主導していた構図が浮き彫りになった。
特に、同庁の元技術審議官・生沢守被告(57)ら歴代の審議官が理事長として天下っていた
財団法人「防衛施設技術協会」は、民間企業へと天下る“トンネル組織”との批判が集まった。
このため、同庁が同協会への天下りを全面的に自粛したことを受け、協会への再就職が“内定”していた職員は、
同庁に残ることになった。また、同じく防衛庁所管の財団法人「防衛施設周辺整備協会」への再就職や、
測量技術などを生かして不動産関係の民間会社に再就職する職員も多かったが、これも見合わせた。
翌年度の職員の総定員や人件費は、前年度のうちに政令などで決められており、急に変更できない。
施設庁では例年、1月上旬から欠員状況を見ながら採用試験合格者に内定を出し始めるが、退職予定だった
幹部がとどまるため、新規採用者の数を抑えざるを得なくなった。また、ポストが空かないため、昇進も中止に。
「課長になると思っていたが……」とこぼす職員も、出ているという。
防衛庁と施設庁では今後、「可能な限り定年まで勤務させる」という方針を表明しているが、キャリアの処遇も含め、
「実現には様々な課題が残されている」(防衛庁幹部)と話している。
ソース:読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060320it06.htm