北海道知床沖のオホーツク海の「中層水」(水深400〜800メートル)の水温がこの50年間で最大0.6度上昇して
いることが大島慶一郎・北海道大助教授(海洋物理学)などの研究グループの分析で分かった。
地球温暖化の影響で流氷の生成量が落ちたことが原因とみられる。北太平洋の生態系や漁業資源に影響が出る
恐れがある。7日、札幌市で開かれるシンポジウムで発表する。
研究グループは、オホーツク海から北太平洋で米露と共同で測定したデータのほか、水産庁などが1955〜2004
年に記録していた延べ約25万地点の観測値を分析した。
その結果、ロシア・サハリン沖のオホーツク海では水深約500メートルの水温が0.6度上昇していた。
このエネルギーは同じ量の空気であれば約100度高くするほど大きなものという。北太平洋の一部でも約0.3度
上昇していた。
シベリア東部沿岸で流氷ができると、海水はさらに濃い塩分を含んだ水となり、海面から水深数百メートルに沈み
こむ中層水になる。中層水はオホーツク海を南下し、北方領土付近を経由して北太平洋に到達する。
このため、研究グループは、温暖化で流氷ができにくくなり、中層水を暖めたのが原因と推測。流氷の減少が続くと、
中層水の沈み込み量も減り、シベリアからオホーツク海にもたらされる植物プランクトンに必要な鉄分などが太平洋に
運ばれなくなる恐れがある。
大島助教授は「ロシア・シベリア東部は他地域に比べ温度上昇が著しく、その結果、流氷の生成量が落ち込んだと
みられる。オホーツク海は温暖化の影響を受けやすく、何らかの対策が必要だ」と警告している。【田中泰義】
毎日新聞 2006年3月5日 1時40分
MSN毎日インタラクティブ
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060305k0000m040138000c.html