米国初のBSE(牛海綿状脳症)感染牛が確認された二〇〇三年十二月の約一年前に、農
水省が「米国でBSE発生の可能性がある」とする報告書を作成しながら、非公開にしていた
ことが四日、日本共産党の紙智子参院議員事務所の調査でわかりました。
「可能性ある」のに輸入継続
日本では、〇一年九月にBSE感染牛が発見され、全頭検査や危険部位除去を始めていま
した。その約一年後の〇二年十一月、農水省は、米国牛の危険度を報告書にまとめながら、
米国から背骨や脳などBSE感染の危険部位の輸入を続けていました。
EU(欧州連合)は、日本より早い二〇〇〇年七月、米国産牛肉の危険度評価を公表し、B
SE危険部位の輸入をやめていました。
存在が明らかになったのは、農水省のBSE技術検討会がまとめた「米国の牛海綿状脳症
(BSE)ステータス評価結果について」(案)と題する危険度評価報告書と検討会の議事録。
同報告書は「BSEが米国内に侵入し、リサイクルされて牛に感染した可能性はある」と記述。
検査の不十分さから感染牛が見つかっていないだけで、「アメリカで将来出ないという確証
はない」「出る可能性があるが、それが高いか低いかということ」(同議事録)などと、BSE感
染牛が米国内に存在する恐れのあることを指摘していました。
同検討会は、〇二年十一月二十一日の会合で評価結果を米政府に通知し、公表すること
を決めましたが、結局、公表されませんでした。米国側への通知も行われませんでした。
「公表手続きが手間取っている間に、翌年(〇三年)春、カナダでBSE(感染牛)が初めて見
つかり、北米全体の危険度評価の前提がくずれた」(農水省動物衛生課)というのが理由で
す。
カナダと米国は北米で、同一地域とみなしていたため、BSEを確認していないという前提で
の報告書は公表できなくなったというのです。しかし、公表手続きに「手間取った」というのは
あまりに不自然です。
この報告書や議事録は、非公開だったため、内閣府食品安全委員会のプリオン専門調査
会での米国牛輸入再開問題の審議でも反映されませんでした。
これらの文書は、紙事務所の小倉正行秘書が情報公開請求をしていたもの。情報公開・個
人情報保護審査会が昨年末にBSE技術検討会の資料の一部開示の決定をしたことを受け、
農水省が開示しました。
しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-03-05/2006030501_01_0.html