◇よみがえれ「甲斐犬の里」 南アルプス市芦安地区 血統保存、繁殖へ住民が活動 市も支援を検討
「生きた天然記念物」と呼ばれる甲斐犬の発祥の地・南アルプス市芦安地区で、
「甲斐犬の里」復興を目指す動きが出ている。かつては狩猟犬として多くの家が
飼育していたが数が激減、住民有志による「甲斐犬保存会」も解散した。
これに危機感を抱いた元メンバーらが、残った会費で購入した優秀な血統を持つ
二匹を飼育。強い足腰を鍛えるとされる山野が入り組んだ芦安特有の環境で
「オリジナル」として育て、繁殖と種の保存を目指している。市側も甲斐犬
発祥の地という地域ブランド性を重視、支援策を検討する考えだ。
復興に取り組んでいるのは、同市芦安芦倉の市職員伊井和美さん(46)と
同所の山小屋管理人森本茂さん(59)。二匹とも生後一年の雌で、
甲斐犬をはぐくんだ山ろくの名前を取り、伊井さんが「南」、
森本さんが「アルプス」と名付けた。
市などによると、甲斐犬は同地区で狩猟のパートナーや番犬として
多くの家で飼われていたが、一九三四年に獲物のカモシカが国の
天然記念物に指定された後は飼育者が激減、
戦後はほとんど見られなくなったという。
八八年には地元の住民有志が「甲斐犬保存会」を設立。
独自に交配を進めるなどしたが優秀な犬が産まれず、
二○○四年十月に解散した。
しかし、「甲斐犬の里」復興への望みをつないでいこうと、
同会は解散と同時に残った会費で二匹の甲斐犬を購入。
現在、元メンバーら二人が地区内で育てている。
甲斐犬の血統は、クマやイノシシなどを追って芦安の山野を駆け回る山犬。
伊井さんは甲斐犬の魅力について「柵を設けても飛び越えてしまう驚異的な
跳躍力と、『この人』と決めた人にしか懐かない忠実さは、ほかの犬にはない」と語る。
この二匹を含め、同地区で現在飼育されている甲斐犬は十匹程度。
森本さんは「甲斐犬らしいスタイルを維持し、能力を磨くには山野が
入り組む地形が最適。市街地では独特の野性味が失われてしまう」と
芦安で育てる意義を強調。今後は「優秀な甲斐犬がいれば交配も検討し、
発祥の地の復興につなげたい」と意気込む。
一方、市も今年が戌(いぬ)年であることなどから支援策を検討中だ。
石川豊市長は「発祥の地で育てていくことに意義がある。地域ブランドとして
PRするためにも、再び保存会を結成してもらい、運営費を
補助していくことも考えていきたい」と話している。
(続きます)
ソース(山梨日日新聞)
http://www.sannichi.co.jp/DAILY/news/2006/01/01/2.html ▽写真
http://www.sannichi.co.jp/DAILY/PHOTO/20060101_2_1.jpg