◇「救えたはずの死」ゼロ 宝塚線脱線の現場医療で調査書
兵庫県尼崎市で4月25日に起きたJR宝塚線(福知山線)脱線事故での
現場救急医療を調査していた日本集団災害医学会の特別調査委員会
(委員長=鵜飼卓・兵庫県災害医療センター顧問)が報告書をまとめた。
国内で初めて実施された「がれきの下の医療」(CSM)などの結果、
救命できたはずの人が死ぬ「防ぎ得た死」は「なかった」と結論づけた。
一方で、医療チームの装備が不十分だったことなど問題点も指摘。
27日に神戸市内である最終会議で承認し、今後の災害時に生かす。
がれきに挟まれている間に治療していれば助かったはずの人、混乱した病院で
順番を待つうち手遅れになった負傷者。そんな防ぎ得た死は95年の
阪神大震災で多発した。この反省から「防ぎ得た死ゼロ」を目標に
災害医療の研究が進んだ。
今回の報告書によると、入院後に亡くなった6人のけがの程度と
治療内容を精査し、全員が防ぎ得た死ではなかったと確認。
現場で負傷程度を判断して搬送の優先順位を決め、
負傷者に札(タッグ)を付ける「トリアージ」を事故発生約10分後という
早い段階で実施した
▽三つの医療チームによるCSM
▽ヘリで負傷者を広範囲の病院に分散して運んだ――などが
有効だった、とした。
一方、問題点として、貴重な現場カルテといえる使用後の
トリアージタッグが搬送・治療の中でなくなった
▽医療チーム間で通信できる無線などの手段がなかった
▽救急車が不足した、などを指摘した。
タッグは現場で約300枚使われたが、保管されていたのは30枚程度だった。
負傷程度を示す緑(軽症)、黄(中等症)、赤(重症)、黒(死亡)の色部分以外に、
負傷者名や性別、住所、トリアージの日時と記入者、搬送先、現場での
診断などを書く欄があり、単なる負傷者を色分けする道具でなく、
責任ある医療に欠かせない。
ほかに委員会は、災害現場には、特別の装備を持った現場医療チーム(DMAT)が
出動する
▽CSMの訓練を受けた医療チームを育成する
▽現場医療を統括する医療コマンダーを置く――など13項目を提言した。
ソース(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/1227/OSK200512270008.html