首都圏で21棟のマンションやホテルの耐震強度が偽装されていた問題で、焦点となっていた住民への安全
対策や購入者への補償問題に、道筋が見え始めた。
20日、建設業者3社が相次いで購入代金の返還や転居の費用負担などの方針を表明したためだ。しかし、
膨れ上がる負担金を今後、関係者の間でどう分担していくかなど、なお事態は不透明で、住民などからは「今
後どうなるのか、きちんと説明してほしい」などの声が上がった。
問題の21棟のうち4棟を開発した建設業者「シノケン」(福岡市)は同日、独自調査で「震度5強程度の
地震で崩壊の恐れがある」との結果が出たマンション2棟について、当面の対応方針を発表。入居者には、
転居先を確保し、引っ越し費用や敷金、礼金などの費用は同社が負担し、購入者に対しては売買契約を白紙
解除し、購入代金を全額返還するという。
同社は「建築士や検査会社など関係者が互いに責任を押しつけあう雰囲気になってきてしまったが、まずは
顧客の不安を取り除くのが第一と考えた」と補償に踏み切った経緯を説明。今後、残る2棟についても被害
が判明し次第、同様の対策をとる方針だ。
しかし、4棟分の売買代金をすべて返還すると、30億円以上の負担がかかるという。「うちも、それほど
体力があるわけではない。今後、建築士や、建築確認を担当した検査会社などに、損害賠償請求していきた
い」としている。
また、千葉県船橋市内に3棟のマンションを手がけた「サン中央ホーム」(船橋市)も、すでに耐震性に問
題があることが判明している1棟については、入居者に、同社保有のほかのマンションに転居してもらう方
針を決め、住民57世帯に伝えた。移転費用や、敷金、礼金、仲介料などは同社が負担する。
12棟の建築主である「ヒューザー」(東京都千代田区)も「欠陥があると判明すれば、本来の責任がどこ
にあるにせよ、売り主として責任をとる」とのコメントを出したが、担当者によると、具体的な補償方針な
どはまだ決まっておらず、「何らかの公的資金を含め、国や自治体に支援を要請しているところ」だという。
補償の対象となったマンションに住む男性会社員(32)は「住民にはまだ説明がない。引っ越しするにも、
それなりの条件を出してもらわないと困る」と怒りを抑えられない様子。一部の住民には、管理会社が転居
先が決まるまで無料でホテルをあっせんすると説明したが、入居者の女子大生(18)は「学校に近いから
ここを選んだのに。ホテルは遠すぎて通えない」と不満そうに話していた。
◆「姉歯」使用の指示、ヒューザーが否定◆
ヒューザー(小島進社長)は20日、同社が元請けの設計会社に対し、姉歯建築設計事務所を使うよう指示
したとされる点について、報道各社に書面を送付し、「面識のない者を使えと指示するはずがない」と全面
的に否定した。同社は、姉歯事務所を各元請けに紹介したのは、熊本県の建設・設計会社「木村建設」だと
し、1999年8月以降、施工業者として使った木村建設が各設計事務所に構造計算の下請け業者として姉
歯事務所を紹介した結果、元請け各社が同事務所を使うようになったと主張している。
(2005年11月21日3時4分��読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051121ic01.htm より