無口な37歳が顔をくしゃくしゃにして喜んだ。
大はしゃぎで歓喜の渦に加わった下柳は同年代の金本と、矢野と、がっちりと抱き合う。
優勝のかかる大一番の先発マウンドで、ベテランの真骨頂を見せつけた。
「良かった勝てて。それだけ、それだけ」。短い言葉の中に、熱い思いを込めた。
プロ15年目の経験が大舞台でものをいう。立ち上がりから変幻自在に変化球を操り、凡打を誘った。
ピンチにも平然と立ち向かう。4回2死一、二塁では二岡をフォークで空振り三振。
5回2死三塁は江藤を二飛、6回2死三塁も小久保を抜群のスライダーで二飛に。
6回を4安打無四球で、無失点。最高の形で救援陣へとバトンを渡した。
頑張る理由がある。下柳が1歳2カ月の夏、母のトシ子さんとともに車同士の衝突事故に巻き込まれた。
下柳には大きなけがはなかったが、トシ子さんは一時半身不随となる重傷。
後遺症のため今も地元長崎で病院通いを続けている。
代わりに無事に育った自らの肉体。下柳が、ケアを怠らない理由の一つだろう。
オフから「岡田監督を胴上げしたい」と言い続けてきた。その夢が、今現実となった。
最多勝争いでもトップに並ぶ14勝目。下柳はいま、野球人生の絶頂にある。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/npb/headlines/20050929-00000066-kyodo_sp-spo.html