北大遺伝子病制御研究所の西村孝司教授ら免疫制御分野のグループが、ヒトのリン
パ球からがんにだけ反応する「タイプ1ヘルパーT細胞(Th1細胞)」を短期間に大量加
工する技術を世界で初めて開発した。
同細胞はがん細胞を攻撃して殺すキラーT細胞を増やしたり、機能を強化するなどの
役割を果たす“助っ人”で、新しいがん治療につながると期待される。
十五日付の米国血液学会誌で発表する。
キラーT細胞の活性化による治療法(がんペプチドワクチン療法)は一九九○年前半
から世界中で臨床研究されているが、期待された効果が上がっていない。
研究グループは、キラーT細胞を助けるTh1細胞をどう活性化させるかに着目。
がん患者のリンパ球を体外に取り出し、がんにだけ反応する機能を人為的にTh1細胞
に与える研究を進めてきた。
これを体内に戻すことで、強力ながん治療効果が期待できる。
これまでに試験管内で、ヒトのキラーT細胞ががんを認識するときに用いるアンテナの
遺伝子を、Th1細胞に入れて特殊な条件下で培養すると、がんにだけ反応するTh1細
胞ができることを突き止めた。
実際に、このTh1細胞が白血病細胞に反応して働くことも確かめた。
西村教授は「二-三週間でヒトに投与できる量のTh1細胞の生産が可能で、幅広いが
んに適用できる。近い将来、北大病院で臨床研究に着手し、北海道から新たながん治
療を発信したい」と話している。
※北海道
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20050713&j=0047&k=200507139566