婚前・婚外交渉が疑われた女性を「一族の名誉を守るため」と称して家族の手で殺害する
中東、南アジアなどの一部地域の風習「名誉の殺人」を告発し、オーストラリアで
ベストセラーになった本に創作疑惑が持ち上がり、店頭から引き揚げられる事態になった。
約1年がかりで疑惑を調査したシドニー・モーニング・ヘラルド紙の記者らには今月、
豪州国内で優れた調査報道に授与される賞が贈られた。
この本はランダムハウス・オーストラリアから発売された「Forbidden Love」(禁じられた恋)。
ヨルダンで育ったという著者の幼なじみが家族に殺され、自身も豪州への逃亡を余儀なくされた
経緯を書いた自伝で、発売はイラク戦争開始直前の03年初め。中東への関心の高まりに乗って、
約20万部が売れた。オーストラリア以外の15カ国でも発売され、約10万部が売れたという。
しかし、ヨルダンでの被害者数を実際の100倍以上とするなど事実誤認も多く、
当のヨルダンで「名誉の殺人」防止に取り組む人たちが抗議の声を上げた。また、
「中東やイスラム教への偏見を助長する」などとしてマレーシアなどでは発売が禁止されていた。
シドニー・モーニング・ヘラルド紙はヨルダン在住の記者らとともに約1年にわたって調査した
結果を7月に公表。著者は米国育ちで本に書かれたような経験をしようがなく、本で触れられた
事件は全くの虚構だと暴いた。ランダム社は販売を中止し、店頭から引き揚げた。著者は雲隠れしたままだ。
年間約20人が犠牲になると言われるヨルダンでは、防止活動も盛んだ。同紙のマルコム・ノックス記者は
「本にうそが多かったため、(本物の)被害者の告発や人権団体の真剣な活動まで信頼性を
疑われてしまった。本が虚構だと証明できてよかった」と話している。
http://www.asahi.com/international/update/1224/007.html 12/24)