東京・市ケ谷の「旧陸軍士官学校」庁舎は、激動の昭和を見届けてきた。
今はなきこの建物の写真をラベルに張った清酒が防衛庁内の売店で売られ、職員や見学者の人気を呼んでいる。
1937年完工のこの建物は、戦中は旧陸軍省本庁舎、戦後は大講堂が
極東国際軍事裁判(東京裁判)の法廷になった。作家の三島由紀夫氏が
70年に自決したのもこの建物。00年に防衛庁が六本木から同所に移る際に多くが取り壊され、
今は大講堂などが「市ケ谷記念館」として残るだけになっている。
清酒の製造は新潟県新発田市の「菊水酒造」。「あの建物がなくなるのは惜しい」
というOBの声を受け、高台になっている市ケ谷の土地にちなんで「市ケ谷台」と名付け、300ミリリットル入りを360円で売っている。
自衛隊は今年発足50周年を迎え、イラク派遣延長も決まり、その姿は大きく変ぼうを遂げつつある。
「酒は憂いの玉箒(たまぼうき)」と言われる。「この酒を手に……」とも思うが、今は飲むほどに心配を除き去るよりも募るような気がする。【平元英治】
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20041221k0000m010005000c.html 12月20日