【歴史好き=サヨ】か?

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次に、>>151の「ご回答」にいかなる問題点があるのか、世界史板的観点から具体的にコメントをいたします。

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「1.サヨっぽい思想 とは具体的にいかなる思想か」に対するご回答
 >>151
 > 本質的に、感性よりも理性によって物事の価値をみいだす人。
 > ここで理性の割合が高い人ほど、より左翼度が高い。

「歴史学の手法」では、ものをいうのにあたり、史料を根拠とし、史料の記述による制約の範囲でしか発言しません。これは「歴史学的手法で発言する」個々の人々が、自分の立場としていかなる政治スタンスをとっているかとは、まったく別個の問題です。歴史学者の中には、右翼もいれば左翼もいます。また今の日本は、かつて存在し、現在も存在している左右の全体主義国家とはことなり、平和でオメデタイ国となりましたから、いかなる政治的立場にも関心がなく「歴史的真実の解明」にしか興味のない学者もずいぶんと存在しております。

歴史家は、ある史料の解読によって得られる新見解に対しては、それをそのまま論文等の形で公表するのが最もあるべき望ましい姿ですが、
 1.その史料の解読によって得られた新見解を公表しない。
   →新見解のみならず、史料の存在そのものを世間から隠そうとする場合も含む。
 2.架空の史料を創作、または実在の史料を曲解・歪曲・改竄して、任意の結論を導き
   出す。
という行為に及ぶ者がいます。

自分の立脚する政治的立場に有利・不利という理由からそういうことをやる場合もあるだろうし、石器捏造事件のように功名心だけで政治的・思想的背景などない場合もあるでしょうが、どのような理由によるものであるにせよ、1・2のような行為に手を染めれば染めるほど、「歴史学者」としての価値は低くなります。

 >>151
 >特に社会、自己に対し疑問をもっていて、理論や理念に傾倒しやすい。
 > また、「平等でなければならない」と考え、社会的弱者、人権を
 > 擁護し、差別を嫌う傾向がある。

この部分は、「1さんのいう左翼」の指標としてはまあ結構ですが、「歴史家」がこのような「傾向」を必ず備えるわけではまったくありません。東京のほうは直接には知りませんので発言を控えますが、関西の東洋史学科では、自分の研究分野の史料をきちんと読まずに「理論や理念に傾倒」ばかりしていると、「研究者たるべき資質なし」として、学部生か、修士課程のうちに引導を渡され、淘汰されてしまいます。

「歴史研究者たるべき資質」として最も重要な要素は、
 ・自分のテーマに必要な分野の史料を探索・入手する能力
 ・史料を正しく読解し、整理・提示する能力
であって、この資質の有無と、1さんのいう上記「傾向」の有無は直接には全く関係ありません。

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その他の私の質問については、まだ具体的にはお答えいただいておりませんね。

以上より、1さんが151で提示された「定義」は、ある人が「1のいうサヨク」かどうか弁別する指標としてはかろうじて使用できなくもありませんが、「歴史家」が(あるいは「歴史好き」が)必然的に「サヨッぽい思想にハマ」るかどうかという命題については、まったく微塵もかけらも証明するものではないといえます。