十字軍

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49世界@名無史さん
第4次十字軍。
もともとはエジプトと戦って聖地エルサレムを奪回するために立ち上がった
はずの十字軍で、フランス貴族中心のこの十字軍には教皇も多大な期待を
抱いていた。第3回の時に、国王の十字軍は政治的な理由でなかなか教会の
言うことを聞いてくれないと思い知っていたからだ。ところが、貴族の十字
軍はもっと統制がとれなかった。
そもそものつまづきは、彼らにエジプトまでの渡航費用を捻出できなかった
こと。ヨーロッパは契約社会である。騎士たちは、ヴェネツィアに契約して
渡航用の船を用意させたのに、肝心のその代金が払えない。ちゃんと彼らの
ための船を用意して待っていたヴィネツィアにしてみれば、彼らを運んでも、
運ぶのを拒んでも大損だ。だが、そこはしたたかな商業国家ヴェネツィア。
「じゃ、うちの国がハンガリーに取られた港町ザラを取り返してくれれば、
運んであげましょう」
ってなことになる。ハンガリーは、教皇のおぼえもめでたいカトリックの国。
東方正教ですらない。そのハンガリーを十字軍が攻めるという、もはや十字
軍だかなんだかわからない逸脱になってしまった。
教皇もカンカンに怒って一度は彼らを破門してしまう。
一方そのころ、ビザンティン帝国は、この国の悪いくせ、権力闘争で揺れて
いた。クーデターで失脚した皇帝の皇子アレクシオスは国外に脱出し、復帰
の機会をうかがっていた。そのアレクシオスが、十字軍を見て、これは使え
ると考える。自分を皇帝に復帰させてくれたら、聖地への渡航費用ぐらい出
してやるさ、ともちかけた。
ヴェネツィアのドゥーチェのダンドロがこれに乗って、十字軍を帝都コンス
タンティノープルに運ぶ。
かくして逸脱しまくりの十字軍はコンスタンティノープルに向かい、アレク
シオス4世を皇帝につけた。だが、皇帝になってみると、帝国の国庫は空っ
ぽで、約束した金など払えない。その上、市民は邪魔者、侵略者という目で
十字軍を見る。十字軍も、イスラム教徒と仲良く暮らしてるギリシャ人を
理解できない。怒った十字軍はコンスタンティノープルを攻略してしまった
のである。
長い苦労で、もはや十字軍は、聖地に行こうという気もうせ、ビザンティン
帝国をヴェネツィアと分割し、ラテン帝国を建てて居座った。
長年対立していた東方正教の総本山を落としたので、以前破門を宣告したは
ずなのに、教皇も機嫌を直して、これを正規の十字軍として認めたのである。
十字軍のダメぶりを象徴する十字軍であった。