世界史なんでも質問スレッド129

このエントリーをはてなブックマークに追加
491世界@名無史さん
>>470
「世界史的に見て」となると、アルゼンチンとイギリスが参考になるな

イギリスはネット上にも資料が多い
まずビーチングアックスとハットフィールド脱線事故を調べた後、なお関心があるならば
JR東海が日本の成功に対するイギリスの失敗という見地で刊行した書籍「折れたレール」をどうぞ

アルゼンチンは建国の歴史から語らねばならない
19世紀初頭の建国時には民族主義・排外主義を掲げたが、立ち遅れたため外資を導入して農業振興を図る
アルゼンチンの鉄道はこの19世紀半ば-20世紀半ばの国際主義の時期にイギリス資本で建設されたもの
二次大戦後、再び民族主義が台頭して鉄道の買収(国有化)が行われる
労働者が多い鉄道はペロニズム(民族主義労働運動)の象徴となる
南米を実験場扱いするシカゴ学派(新自由主義学派)による干渉も拒絶する、まさに聖域だった
だが老朽化した施設を労組の反対で近代化・合理化できず、不便なまま赤字は膨れ上がる
ついに鉄道は国民の支持を失って徐々にトラック化が進み、ペロニスタ党自らの手で解体・分割民営化されることとなる
ブエノスアイレス都市圏の通勤鉄道は便利になった
一方で鉄道路線の70%が廃止・国鉄職員の85%が失職という大ナタに、電力なども民営化されて、
アルゼンチンの失業率は7%から28%へ急上昇し、社会不安・治安悪化を招いた

結局ペロニスタ党はこの社会不安を背景として急進党に政権を奪われ、
政権を奪還後、公共部門の再国有化とペロニズム回帰を図ることになる
失敗であった、ということ
ただし、物流は既にトラック移行完了したため国鉄化・路線復活などはされておらず、
ブエノスアイレス都市圏が民営から第三セクターに移行した程度

一つ苦言を呈すると、どうも最初から結論を決めてかかっているように見えるが、
歴史に学ぶと言った以上、都合の良い結論だけ選り取らないでほしい
公益インフラの民営化は好ましいことではないし、基本的にはシカゴ学派の横槍だが、
人員削減を嫌った合理化阻止の労働運動がありえた未来を潰したのもまた一面の事実だろう
乱暴なガラガラポンでしか事態を動かせないという要素は確かにあった

それから、明治の官営工場払下げや鉄道国有化時の財閥の抵抗といった、世界史どころか日本史とも比較してみてほしい
492世界@名無史さん:2014/06/23(月) 06:33:27.66 0
>>488
投機の過熱を抑えるために政府が待ったをかけて売らせなかったものと記憶しているが…
バブル期に売っていれば国民負担分の累積赤字は残らなかっただろうよ

なお、道路四公団の累積赤字は国鉄の累積赤字を突破している
バスとトラック便まで持って津々浦々まで移動・物流を伸ばしていた国鉄よりも
幹線高速道すら整備できていない道路公団の赤字の方が巨額となれば、
果たして赤字を糾弾して国鉄を潰したのが正しかったのか、疑問を覚えざるを得ない
はっきり言えば交通政策としては疑問の余地なく誤り

この反省・見直しを行っていないのは日本だけだ
日本では国鉄民営化が上手く行っていたからと説明するのは容易いが
ここ数年の北海道での事故連発を見るに、それは失敗から目を背けているだけでしかない
成功した所は成功として(ブエノスアイレス近郊の鉄道のように)、
だから失敗した所も言を弄して認めないというのはどうなのか