【文明の接近】E・トッド【帝国以後】

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182世界@名無史さん
2014年、世界秩序の行方を占う 歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏に聞く
ttp://www.nikkei.com/article/DGXZZO64608980W3A221C1000000/

米は生まれ変わる過程
――世界で最も注目している動きは何ですか。

 「米国とイランの関係変化に注目している。イラン核開発問題を巡る協議の合意=キーワード参照=は大きな転換点だといえる。イランではすでに新たな市民社会が出現しており、劇的な変化はむしろ米国の方だ。
金融資本に立脚した米国型の民主主義を押しつけたブッシュ前政権と違い、オバマ政権は理性的で寛容的な外交姿勢をとる。戦争や暴発的な紛争のリスクはゼロ近くにまで低下した」

――オバマ大統領の支持率は低迷しています。

 「オバマ氏の1期目の大統領選出は米国が金融崩壊を忘れるためのトリックだとみており、感銘はなかった。だが2期目は違う。医療保険制度改革法(オバマケア)のような社会保障の議論の変化は重要だ。
(大統領に反発する)草の根保守運動『ティーパーティー(茶会)』の存在もあるが、主な支持層は高齢者だ。たぶん米国は生まれ変わる過程にある。歴史の転換点を見逃してはならない」

ソフトパワー上昇

――世界の「無極化」は心配ではないですか。

 「第2次世界大戦後の1980年ごろまで、ソ連の脅威もあって米国の支配は自由主義の世界に必要だった。冷戦終結後に米は産業基盤の喪失を軍事の拡張で埋め合わせるようになり、それがブッシュ前政権時代のイラク戦争での失敗につながった」

 「世界は米国の強すぎる軍事力に嫌悪感を抱いていたが、米国という帝国が自ら世界の支配者でないと認めると、米軍のいない世界を心配し、米国が必要だと気づく。
これは大いなる逆説だ。ハード面の軍事や経済力の低下を受け入れることで、米国のソフトパワーは高まる」

 「最近の日本とロシアとの接近は非常に好ましい。内政でのプーチン政権の体制は非常に強硬だが、外交は国際社会の中で穏当で有益な役割を果たしている。
バランスを取り、特定の国を敵視することもない。ロシアが主導したシリアの化学兵器廃棄を巡る米ロなどの国際合意が端的な例だ」