ああ、やっと思い出した。
(ポールを付けられるのは嫌なのだが)そういう名前だった。
ドン・キホーテについての文章、が出たときには、てっきり私のことが
すでに分かっているものとばかり思っていたが、、、、
私は初期の著作『言葉と物』で、古典主義時代(言語と物が、類似により同じ平面で絡み合う
ルネサンス期と違い、言語が独立した空間を形成する時代)の最初の作品として、
『ドン・キホーテ』を題材に取り解説した。
ドン・キホーテについて述べた箇所は、ごく短いものであったが、これまで
指摘されていなかった一番重要なポイント、つまりこの著作がどういった
一貫性を持って書かれたかについて分析した。
一見、大衆向けの滑稽譚のようにみえるこの話は、実は非常に緻密な仕掛けを持っていたのだよ。
私の著作についての解説書は、無数に出版されているし、君たちの国でも
何10冊かは出ているはずなので、読んでみてくれたまえ。
おっと、興奮して君の名前を聞くのを忘れていた。
何せ私の国の人間は、ほっとけば聞かれもしないことを一人でずっと
しゃべり続けてしまうものでね。