今回は長くなります「ドラえもん、のび太とハンニバル伝説」(中巻)
カルタゴ軍は先の戦いにより、ローマと敵対していたガリア人の心を掴むこと
に成功。兵力は5万人に達し、アルプス越えを始めた時を上回った
____
/ - 、 - 、\
/ , -| ・|・ |-、ヽ
/ / ` -●-′ ヽ 「まだ、油断はできない。
| | 三. | 三. | 敵を倒さなきゃ」
! | , -─┴─┘ !
◯\ ヽ ( ____/ /
\ ━━━o━━━、
\| / \ ヽ
ハンニバルはさらなる敵を求めて南下する
一方のローマは紀元前217年、執政官にガイウス・フラミニウス、グナエウス・セルウィリウス
の両名を選出。四個軍団5万名を動員する
___
____ / \
/_____ヽ ⊂二二>─ ┬i
|__| ヽ / | | | /| |ヽ | |_| ←グナエウス・セルウィリウス
(d (・ (・ l、 | 。 6) 「いいだろ。ただし、捕捉した場合
! )⌒ i ∩__ ヽ ノ ノ は直ちに合流だ」
/\ ノ(フ ノ ( つ ) ` ┬ イ
/ ヽ ` ─── ´ ヽ_| ̄ ̄| /^▽▽ ^ヽ
| | | ノ | | | |
↑ガイウス・フラミニウス
「敵の南下進路が分からない…分散配置しよう!」
軍団を2万5千ずつに分け、セルウィリウスはリミニへ、フラミニウスはアレッツォへ向かった。
─── ____ ────
── / \,,/ \────
_ / / −| ・|・ | ヽ __ 「な〜に!各個撃破してやれば、
─ | / `−●-´ヽ| ── どうと言うことはない!」
. | | ___ 三 | 三 |
_ i | \| ̄| ̄| ̄|/ / __
─ ヽ | `─-─′ //○ ─
─ /━━━( t)━━i /___
○ / ヽ ノ/────
しかし、ハンニバルはこのローマの動きを見逃さなかった
カルタゴ軍はアペニン山脈を越えてフィレンツェに到着。ペルージャへ向けて南下する。
ローマ軍はこの進路を軽視しており、完全に裏を掻かれた
/´ ̄ ̄`\
/-<二二>ヽ 「急いで合流しなければ!」
|_|/ > <ヽ|_|
(| o |) , ──‐ 、
| U l /_____ヽ
ヽ = ノ l_| / ヽ |_l
>── く (/ 」 < ヽ) 「だが、挟撃のチャンス
/ \/ヽ/ \ | O l でもあるんだ!」
(ヽ_ /\l l/\_ /) ヽ )=( ノ
<⊂ / | |\ ⊃> / ` ー── ´ \
 ̄ ̄ |_______|  ̄(ヽ ̄./ヽ/ 、/\_ /)
/ | く⊂ ̄ l─────── l、 つ>
/⌒ヽ__ノ `ー─−´|─────── | ` ー─−´
| | l | |_____ _|
|ー─| | | | / ⌒ ヽノ
|___l ヽ__ノ |───┬|____|
(__) | | |______l
ヽ、_ ノ (____)
フラミニウスはセルウィリウスへ合流の要請をし、アレッツォを出陣してカルタゴ軍を追う
一方、ハンニバルは密かに、トラシメヌス湖畔に兵力を配置していた
_____
/ − 、 −、\
/ , -| ・|・ | 、ヽ
/ / ` ー ●ー′ ヽ 「この辺りは伏兵に最適
| / 二 | 二 l の土地だな!」
| | \ ─ | ─ / !
| | \ | / /._
ヽ ヽ  ̄ ̄ ̄ /(__ )
>━━━━O━━━ /
/ / ____ヽ /
◯ | ヽ ノ | |
トラシメヌス湖の北岸を通る街道は丘陵の間を通る隘路であり、側面配置が非常に
脆弱にならざるを得ない場所だったのだ
__ 丘
\ /▲ \____________
\_/▲ ▼ ★★★★ ■ \_ ■ 重装歩兵
■ ___) ★ 軽装歩兵
■ (_____ ▲ 騎兵
____________________ ▼ ガリア人部隊
トラシメヌス湖
ハンニバルは重装歩兵がローマ軍を引き止めている間、騎兵がローマの退路を塞ぎ、
側面から軽装歩兵とガリア人部隊が攻撃を仕掛けると言う作戦を立てた
紀元前217年6月24日早朝、フラミニウス率いるローマ軍はトラシメヌス湖畔に差し掛かった。
運が悪いことに、この日は霧が濃く、彼らは全く待ち伏せに気付かなかった
, ─ 、
(_(_(_, ヽ
, ─── 、 (⊃_ ノヽ
┃ ┃┃ /WWW \ \ l l
┣━ | | l \ll/ ヽ/^ヽノ | 「さぁ、俺たち騎兵の出番だぜ!」
┃ | | (| (。) ∠ ノ !
┃┃ | | / (二) / ⌒ヽ | | /
━╋┓ /| l _ /\ \| l l く
\\ ┃┃ |\/ |/| (__/ \ ヽ ノ // \
\\ _| _└ ヽー`ー`─ ´ /´
☆ \ (ヽ \ |  ̄ ̄ ̄ / ⌒ヽ
/⌒ヽ ∠ \\/ヽ l  ̄ ̄| 二|
/ /\ |/ヽ/\ ヽ_ノ ヽ、_ ヽ_,_ノ
l_/\/\ /\/  ̄ \  ̄ ̄ ̄
ハンニバルの要請に騎兵はよく応え、素早く退路を塞いだ。やがて、側面から軽装歩兵とガリア
人部隊も攻撃を加え、トレビアと同様、ローマ軍は機動兵力と待ち伏せにより完全に包囲されて
しまう
この戦いにより、ローマ軍の死者は1万5千の損害を出し、残りの兵もほとんど
が捕虜となってしまう。また、指揮官のフラミニウスは戦死した
___
/____ヽ
|__| / ヽ|
(d > <| 「畜生!強すぎだぜ!」
j、 )⌒ )
/ \ A/
/ ⌒  ̄ ̄ |^|
| | |__ | | /\
/|\\_ |⌒)⌒)
|  ̄ /⌒i ̄  ̄ ヽ
\_|__ |─-| ─|
/|─ | | ̄ ̄)
| ̄ ̄)  ̄ ̄
対するカルタゴ側の死者は1千2百名。数字の上ではパーフェクトゲームだったが…
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/ - 、 -\
/ , -|/'|-ヽ|ヽ
/ / ` -●-′ | 「その後の追撃で捕虜にできたとは言え、
| | 三 | 三 | ガリア人は弱いな…。また、中央突破
| | └┐ / されるとは…」
ヽヽ. / ̄ ̄ ̄ /
/━━━━o━´
/ |─┐| |
| ヽ○ ノ○
(ヽ  ̄)_)
ハンニバルは決して勝利に驕らなかった。この真摯な反省が次の勝利を手繰り寄せる
三度にわたり、敗戦を続けたローマはついに独裁官としてクィントゥス・ファビウス・
マクシムスを選出する
__ゝ,..───..、
/ : : : : : : : : : : : :\
/:: : : : : : :; ───┬` ←クィントゥス・ファビウス・マクシムス
i : : : / / /^ヽ ! 「まともにハンニバルと当たっても勝ち目
|:: :: :: ; -v' | | ゚| | はない。持久戦に持ち込もう!」
!:::: :::| d `− ┐
ヽ::: ::ヽ_ ┌── !
\;イ ヽ./ノ
_j___┬─ ´
/───-ヽ ∩
/ /⌒\ | /  ̄,⊃
| ヽ \| /\ _ノ
ファビウスは巧妙にハンニバルとの対決を避け、敵が疲弊するのを待った。しかし、
/二二二ヽ
「そうだ そうだ。」 |∧,,∧ | | 「ファビウスは臆病者だ!
__ | ・ ・ |_| 本当は戦う気がないんじゃないか?」
/ /  ̄ ̄ \ ⊂二 __)
⊂二>_ヽ__(_ ̄_ ヽ i / ̄ ̄└─┐ ノ|\l>
| ・) ・) | |) | |) | | ⊂二二>-┬// |∠lヽ
( ^ | 丶 _) | (・ )( ・ ) |_ ̄/▽▽^゙\
` -─ ヽ._⌒ ィ−' | ⊂⊃ _)| | |\ヽ
/ / || ̄||^ヽ ヽ、(「「「「).ノ | | |//
| | | || ⊂ ̄) ̄/ ̄ ̄ ヽ| | (_)′
ファビウスの作戦は市民の理解を得ることができず、半年の任期のうちに孤立してしまう
「のろまのファビウス」と侮辱された彼の任期が切れると、元老院は決戦を望む声を反映し、
ルキウス・アエミリウス・パウルスとガイウス・テレンティウス・ウァロを執政官に選出する
/⌒/ // \
/ ⌒ ⌒ \ i / || /⌒ヽ ←ガイウス・テレンティウス・ウァロ
/ ノ \ ヽ| i 3 || 3 | | 「決戦に挑むよ!」
i ∠ U ー\ | ./ ̄⊂⊃ ̄ `ヽ| |
|_/ へ へ\_| i .| |
( | | (゚| |∠| | Vヽ、____ ノ\_ ! \
(/ ! ー 、 ー !/ / | l | `ヽ ヽ
\ _ ./ ─- 、ヽ__ノ ヽ\ i
(/ .>ー──イ( ___ ヽ ∨ /
┌=/ l \/=\ノ \(_,_,_ ノ | /
│ / | \ ヽ ヽ、_,_,_)
| / ─, − 、 , -< ノ | |
 ̄ ̄ヽ _(__i_)U (_、、_ノ'i ̄ ̄ ̄ ̄\ | |
「どうなっても知らないからね」
両名は80,000名の軍団を率いてハンニバルの迎撃に向かったただし、同じ執政官であっても
パウルスは慎重だった
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ヽ, -─┴ ─ 、__/
/ ノヽ___ | | ←ルキウス・アエミリウス・パウルス
「 ̄ー| ー |─| | 「ウァロ君はどうも、勇猛過ぎ
/ー 0 ー─ ´ ⌒ヽ ますね…」
| (\ ヽ _丿
l (_ | ノ、
\ _____ // \
/|/▽\/_ //^\
/7 | / |/ > l ヽ
l ヽ | / / \ l
| O ´ | ノ
しかし、結局は主戦派のウァロに押し切られ、カルタゴ軍とローマ軍はカンナエの地に対峙する
一方、ハンニバルは待ちに待った決戦の到来を喜んだに違いない
, -─,─、- 、
/ , -| / |ヽ i、\
/ /三 `ー●- 三ヽ、
/ / , - ─┴─ 、 ヽ 「ふぁ〜あ…。待ちくたびれて
i / / ヽ | いた所だったんだ。前回の反省
⊥ i / | ! 、 を無駄にしなくて済む」
(_ ノヽ| | ( ⌒ヽ⌒) //_ノ
ヽ \ヽ_____// /
\ `━━━━6━ ' /
| / ____ヽ|′
| | ヽ ノノ|
O-ヽ ` ー─i⌒ヽ/^ヽ
ヽ、____| |__ ノ ,
`ー ′
ハンニバルにはこのカンナエの戦いを勝利に導く秘策があったのだ
川___________________________
▲ △ ■ カルタゴ軍重装歩兵
▼ ガリア歩兵
▼ ▲ カルタゴ軍騎兵
▼ □□□
■ ▼ □□□ □ ローマ軍重装歩兵
■ ▼ □□□ △ ローマ軍騎兵
■ ▼ □□□
▼ □□□
▼
▲ △
ハンニバルは何故か、脆弱なガリア歩兵を前面に弓なりに配置した
紀元前216年8月2日、南イタリアのアプリア地方のカンナエ付近でついにローマ軍
7万とカルタゴ軍5万が衝突した
________
ヽ, ─┴── 、 /
/ W___ | ̄|
| ̄ ミ|・ |─| |
/ ー 0 ー─ ′ ⌒ヽ
「おや?カルタゴの l (\ ヽ _ノー- 、
前面はかなり弱い l > | ノ | / \
ですね」 ヽ、_(__ノ____ /| | l \
/ | ヽ /▽\ | < ヽ
l 7 \ | \.| / \
| 、 \ \ | /
| |\ ` O
当初、ローマ軍は数にまかせてガリア人部隊を押しまくり、戦いを有利に進めた。また、
連戦連勝を続けていたヌミディア騎兵も優秀な敵左翼のローマ同盟軍騎兵に苦戦する
_ __ っ
/ ⊃vvv | っ
| C>。(:) 6)- 、 )) 「くっ!なんて強さだ!」
/~「(二つ ノノ^゙)ヽ
|.γ  ̄ ξ/\ノ |
ヽ| |/ / ./
/^^^ / _/ ノノ
/ /| ̄ |
, ―、 /  ̄ ヽ /__||___|
(__  ̄| ̄ ̄ ヽ/⌒)/(__(__|
 ̄ ̄ ̄ ̄/ _ /
( ̄| )
しかし、カルタゴ軍左翼ではハスドルバル率いるスペイン・ガリア騎兵がローマ軍
騎兵を打ち破る
____
/: : : : : : : : : \
/: : : ;;; : : : : : : : : :ヽ
/: : : / ) :_ノ^): :ノ^_):丿 ←ハスドルバル
l : : :/ / ヘ_ ヘ_l 「ヌミディア騎兵が苦戦している…
| : : l | (゚| |(゚| | 助けに行かないと」
ヽ,-! ー′ 、 ー ヽ
_ l ヽ _′ ノ
/: : `ノヽ、 ヽノ /:ヽ
゙--- ′__| ` −┬´ \;;ノ
/ヽ\ ̄∧ ̄ノ`ヽ
ハスドルバルは素早くヌミディア騎兵の救援に向かう。また、劣勢と思われたガリア人
歩兵も弓なりの陣のお陰でゆっくり後退し、カルタゴ歩兵の援護を受けることができた
川________________________________
▼
▼ □
▼ □ □
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■ □ □ □
■ □ □ □
■ □ □ □
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▼ □ □
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▼ ▲△▲
こうして、ローマ軍はV字型の陣形となり、包囲の危険が出始めた
そして、ついにローマ同盟軍の騎兵がヌミディアとハスドルバルの挟撃に合って
敗走。重装歩兵もあと一歩で中央突破できたが、あえなく後ろに控えていたカル
タゴの精鋭重装歩兵に進軍を阻まれる
_____
/ | ・| ・ | 、 \
// `-●-′ ヽ ヽ_ 「さぁ、包囲してやれ!」
| 三 | 三 `(___)
| / ̄ ̄ ̄ ̄\/ /
ヽ\_(二二)_ / /
/━━(t)━ / /
/ (┌─┐) |
カルタゴ騎兵は逃げるローマ兵を追わず、ローマ軍中央の後方へ回り込んだ。ここ
にまたしても、包囲陣が完成する
川________________________________
▼▼▼▼
▼ □□
■□□□□□ ▲
■□□□□□
■□□□□□ ▲
▼ □□
▼▼▼▼
背後を騎兵により突かれたローマ軍はパニックとなり、中央に密集。大量の圧死者
を出す。もはや、完全に包囲されたローマ軍は殲滅される以外に道は無かった
|\ lヽ、ヽ lヽ∧/レ
lヽl \ ノ レl
ヽ ` ー 、、´ ノ
ヽ ____||___ /
ヽ-──/ / ヽ\
| / _____ ____ヽ
/⌒ヽ/ | (0) | (0) |、 「ぐはっ!だから嫌だって
l ヽ  ̄ ̄| | _ | | 言ったんです!」
| ノ  ̄ ̄ ̄ ̄ ( _ )  ̄ \
ヽ、_ /⌒ヽ ヽ
/ / | / __ノ ヽ |
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| | | | | | l
. | ヽ l | | ノ /
| | \ `\ /
| | ヽ 、 _____\_ ノ__ /
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ここに勝負は決した。この戦闘でローマ軍はおよそ6万名の死傷者を出す。また、指揮官
パウルスは戦死し、ウァロは逃亡した
この戦いは史上初の完全な包囲殲滅戦であり、現在でも戦術の基本として軍人の
バイブルとなっている
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, ── 、. / −、 −、 \ __
/ ─┐o ヽ / , -| ^ | ^ |- 、 ヽ / \
| / j / / ` - ●- ′ ヽ ヽ | 祭 | 「初めて、思い通りの
\ / ⌒、/ | ( 三 | 三 ) | \--、 丿 戦いができたよ!」
 ̄ \、__. | | |\____|____/| | |_// ̄ ̄
(___)ヽ ヽ / /__ )
\ ヽ、\_ (二二二)_/ / /
\ ━━━(〒)━━━ /
| / ___\ |/
. l | ヽ__ / ./⌒ヽ
| `──── | |
ヽ/ ̄ノ ̄ ̄ ̄ヽ__
この時が軍人としてのハンニバルの絶頂期だった。一方、ローマでは救国の戦士が
敵将ハンニバルを師として台頭しようとしていた
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/ _ _\
| |_| |_| | ←?
| __ | 「やっと、僕の
\(__) / 出番か…」
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/ ヽ
( )
彼こそハンニバル最大のライバルとなる男だが、その話はまた今度に
「ドラえもん、のび太とハンニバル伝説」(中巻)Fin たぶん、下巻に続く