【アトランティスの謎】イリヤッド入矢堂見聞録

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42世界@名無史さん
ορειχαλκοs オレイカルコス (オリハルコン)

οροs(オロス 山)とχαλκοs(カルコス 銅)が繋がった言葉で、
プラトン以外の作品では、「真鍮」「青銅」(銅と亜鉛の合金)と翻訳されている。
初出は、作者不詳の『ホメロスの賛歌』(Ven. 9)で、
次がヘシオドスの『ヘラクレスのたて』(122)
その他10作品に登場する。
ラテン語では、orichalcum(オリカルクム)と綴られる。
喜劇作家プラウトゥスの作品に登場するalboque orichalcoは、
真鍮の一種の王金(銅75% 亜鉛25%)。

43世界@名無史さん:2005/09/10(土) 03:37:01 0
プラトンの『クリティアス』では、オレイカルコスという単語は
114E, 116C, 116D, 119Cに登場する。
以下、岩波書店のプラトン全集12巻に収録されている
田之頭安彦訳『クリティアス』からの抜粋。

【なによりもまず、この島では硬・軟両質の地下資源がことごとく採掘された。
いまはただ名のみとなっているが、
当時は実際に採掘されていたオレイカルコスの類いは、
そのころ金につぐひじょうに貴重な金属であって、
島内のいたるところに分布していた。】

【なお、それらの建築物には一色の石材を用いて建てたものであり、
美しく見せるために各種の石材を混ぜて色どりを工夫し、
建物におのずと魅力がそなわるように配置したものもあった。
それにまた、かれらはいちばん外側の陸地環状帯を囲む石塀のまわりを
塗料でぬりつぶしたようにびっしりと銅版でおおい、
内側の陸地環状帯の石塀のまわりには錫板を、
アクロポリスをじかに囲む石塀には炎のようにさんぜんと輝く
オレイカルコスをかぶせたのである。】
44世界@名無史さん:2005/09/10(土) 03:41:17 0
【で、王たちはこの神殿の外側をすっかり銀板でおおったが、
破風は別で、そこには黄金の板をかぶせた。
そして内側の天井には一面に象牙をかぶせ、
金や銀やオレイカルコスの飾りつけをして変化をもたせるとともに、
その他、壁や柱にはびっしりとオレイカルコスを敷きつめていた。】

【国家統治の名誉ある職に関することがらは、建国当初より、
つぎのように定められていた。一〇人の王たちは、
それぞれ自分の領内や町では住民の上に絶対権力をふるい、ほとんどの法を支配し、
意のままに人を罰し処刑していた。
とはいえかれら相互の支配関係や交わりについてはポセイドンの〈戒め〉に
したがっていたのであって、これは一つの掟としてかれらに伝えられた。
そしてそれは初代の王たちの手でオレイカルコスの柱に刻まれたのであるが、
この柱は島の中央のポセイドンの社に安置されていた。ここでかれらは、五年目と、
その次の年には六年目に会合をもち、偶数年の会合も奇数年の会合もともに重視し、
この会合で国事公共の問題を相談したり、なにか罪を犯した者がいるかどうか調べて、
裁きを下していたのである。】
45世界@名無史さん:2005/09/10(土) 03:55:33 0
ορειχαλκοs ・・・
46世界@名無史さん:2005/09/10(土) 03:59:06 0
このようにオリハルコン自体は、武器というよりも装飾品として使われており、
硬さ・丈夫さよりも、希少価値が謳われている。

>>42で示したように、オレイカルコスは、「山の銅」を意味し、
他の作品では青銅や真鍮などの銅系の合金と解釈され、クリティアス中に
登場するオレイカルコスも同様に解釈する説が最有力である。
あるいは銅そのものと考える人もいる。ラテン語で銅をcuprum クプルムと呼ぶが、
これは古代オリエントの銅の一大産地であったキプロスに由来する。

他の候補としては:
琥珀:当時琥珀は金並みに価値があった品で、遠くバルト海沿岸からオリエントまで、
交易によって輸入されていた。

鉄:トルコ東部の山岳地帯は鉄鉱石の産地で、ヴァン湖畔から
世界最古の鉄器が出土している。鉄器を用いた国家としてヒッタイト
(ヘテ、ハッティ)が有名だが、実際はそれに先んじてフルリ(ホリ)人の
建てた国家ミタンニや、言語的に同族のウラルトゥあたりが
最初に使用したと言われている。
ちなみにエジプトを一時的に支配したヒクソス人の最有力候補はフルリ人。

石英かダイヤ:古代オリエントではダイヤは産出せず、すべて
インドから輸入していた。エデンの園のモデルとも言われるバーレーンこと
ディルムンの島は、インド交易で栄えていた。

孔雀石などの顔料:クレタ島やサントリーニ島から発掘されるフレスコ画の
顔料の大部分孔(雀石、滑石、酸化鉄、藍銅鉱)は、サントリーニ島の火口壁で
掘られたものであることが判明している。