☆【装丁】書物の歴史【印刷】

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27世界@名無史さん
酸性紙の変遷
ヨーロッパで工業化に伴う紙の大量生産技術が開発され、
木材パルプと硫酸アルミニウムが使われるようになったのは、
1850年代以降のことです。
日本にヨーロッパの技師を招いて最初の洋紙が生産されたのは1874(明治7)年
と言われていますので、日本で作られ使用されていた洋紙は、
まず酸性紙であると疑う必要があります。また、太平洋戦争中・
直後に製造された紙は、粗悪な材料が使われており、
劣化の進行が特に激しくなっています。
酸性紙問題が浮上してきた1980年代後半以降、
書籍の本文用紙などには中性紙が積極的に使われるようになりました。
28世界@名無史さん:04/10/20 16:27:29
酸性紙と中性紙の違い
一般に使われている紙は、
製造工程中にインクのにじみ止め(サイズ剤)が加えられています。
サイズ剤として広く使われてきたのは松やに(ロジン)であり、
それを紙に定着させるために硫酸アルミニウム(硫酸バンド)が
使用されてきました。硫酸アルミニウムは水分と反応して酸を生じ、
紙を酸性にします。これが紙の繊維であるセルロースを傷め、
繊維のつながりが断たれた紙はボロボロに崩れてしまうのです。
29世界@名無史さん:04/10/20 16:30:58
明治の初め、日本の近代化を図るために西洋の知識や技術が日本に
輸入され、紙の製法や印刷技術も西欧化されました。
これにともない、日本古来から使っていた和紙にはない酸に
よる紙の劣化という問題をかかえることになったのです。
近年の研究成果によりますと、酸性紙によって作られている
印刷資料の寿命は、約100年間しかないと言われております。
わが国に西洋の抄紙法が採りいれられたのが目地の初期であり、
酸性紙の主な原因といわれる木材パルプの生産が始められたのが
明治の中期であります。したがって、わが国において、
問題の酸性紙を用いて出版が行われ始めてから、
約100年を経過しようとしております。
このことは、明治中期から印刷され始めた洋紙による図書・
雑誌関連資料が、現在紙の劣化によって崩壊期にさしかかっている
ことを意味しています。
30世界@名無史さん:04/10/20 16:34:34
紙の酸性と中性
 19世紀後半以降20世紀に作られた本は百年もたたないでボロボロに
なるのではないかと心配されています。
早くから「図書館の本がだめになる」と指摘されていたが、
70年代にアメリカで現実の問題になり、傷んで貸し出し不能の図書が
増えています。

印刷用紙にはインキの滲み止めの目的でサイズ剤が使われています。
多くは松ヤニ(ロジン)をアルカリで処理し、水溶性にしたものです。
このサイズ剤をパルプにくっつけるのに一番良いものが硫酸アルミニウム
(硫酸バンドとも呼ばれる)です。硫酸アルミニウムは水に溶けると
加水分解して酸性を示します。ですから通常は酸性で紙をすいています。
また、すき上げた紙には硫酸イオンが残り紙を酸性にします。
この硫酸イオンは時が経つと繊維を傷め紙をボロボロにします。
硫酸アルミニウムを使わないで中性からアルカリ性でパルプに
くっついてインキの滲み止め効果を示す中性サイズ剤が開発され、
この中性サイズ剤を使用してすいた紙が中性紙です。

日本では現在、上質紙の10パーセント以上が中性紙となっています。
コート紙の原紙も中性紙の使用が多くなってきました。
ヨーロッパ諸国では上質紙の40〜50パーセントが、
アメリカでは20パーセント位が中性紙です。

中性紙か酸性紙かを見分けるには、食酢に紙の小片を入れて割箸などで
沈めると、中性紙はごく小さな泡がポツリ、ポツリと発生する。
また、紙を燃やして黒い炭化物ができるのは酸性紙で、
白い灰になるのは中性紙です。酸性紙は硫酸イオンがあるので繊維が
炭化します。