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世界@名無史さん:
【モスクワ=内藤泰朗】ロシア政権がシベリアで成功を収めた日系木材加工企業に、税務面での攻撃を強化
している事実が11日までに明らかになった。恣意(しい)的な追徴課税を課すことで倒産に追い込み、企業の
乗っ取りを画策している可能性がある、とみられている。ロシアでは、日本たばこ産業(JT)の露子会社など
有力日系企業への圧力が強まっており、大型投資などは今後、一層の警戒が必要となりそうだ。
露税務当局からの攻撃を受けているのは、イルクーツク州ノーバヤイギルマにある製材企業「イギルマ大陸」
(ヨシフ・ポダショフ社長、資本金・約4億5000万円)。ソ連(ロシア)政府と大陸貿易(東京都港区、吉冨正幸
社長)が18年前、日ソ合弁企業第1号として設立し、これまで順調に成長を続けてきた。
ところが、昨年秋からイギルマをめぐる状況に大きな変化が出てきた。まず、ロシアの新興財閥がイギルマ
に突如買収を持ちかけ、同社がそれを拒否したところ、連邦資産管理庁側が臨時監査を実施。内務省や税務
当局の査察が「休日もなく続き、生産と業務に支障が出始めた」(イギルマ関係者)。
これに伴い、地元の新聞などでも、「海外からの投資は、ロシアを食い物にしている。ふところを肥えさせる
べきではない」など、同社が半ば違法な事業を展開するという誹謗(ひぼう)、中傷が目立ち始めた。
新興財閥側も、イギルマのポダショフ社長に対し、辞任を迫る脅しまがいの圧力をかけている。
同社側は「これまでの税務調査ではまったく問題がなかったにもかかわらず、新興財閥が現れてから突然、
嫌がらせが始まった。記事も、一度も当社を訪問せずに書かれたもので、事実に反しており、対応に苦慮して
いる」と話す。
同社がある村では、村人たちが「別の村で成功していた木材加工会社が、同じようなやり口で別の会社に
乗っ取られ、村の経済基盤が破壊された」として州知事に保護を訴える公開陳情書を提出したが、同社への
攻撃は続いているという。
ロシアでは、税務当局や内務省と癒着した新興財閥が、司法当局にまで影響を及ぼしている。
プーチン政権は先に、露民間石油大手ユコスを脱税と国家資産横領容疑で訴追し、巨額追徴課税で事実
上の破綻(はたん)に追い込み、同社石油の6割を生産する中核子会社を形だけのオークションにかけて
政権側の意中の企業に落札させた。ユコスは、国家による乗っ取りを是認した前例となった。
司法は、このときも政権側に立っていた。
ユコスのほか、JTの露子会社にも税務当局から巨額追徴命令が下され、それを不服とするJT側との間で、
裁判が進行している。このほか、日本企業が資本参加するサハリンでのエネルギー開発プロジェクトにも、
政権側の圧力がかかっている。
これら日系企業に対する政権側の意図は不明だが、いずれの場合にも共通するのが、ロシアで成功して
いる企業だという点だ。
サウジアラビアに次ぐ石油輸出国であるロシアは、世界的な原油高のおかげで、空前の好景気を迎え、
消費も急激に伸びている。このため、ロシアに生産拠点を移すことを検討している日本企業も多いとみられ
るが、こうしたロシアの企業乗っ取りの実態を徹底研究してから判断した方がよさそうだ。