復興物資が山となって積まれているイラク。一人のイラク人の男がその
光景を感動をもって見つめている。
「世界はイラクを見捨ててはいなかったのだな。アラーに感謝しなくては。
よし、早速このダンボールから開けてみよう」
男がダンボールを開くと、その中には大量のハリウッド映画がギッシリ。
『ダイハード』『エアフォースワン』『アルマゲドン』・・・なぜか日本の
『ゴジラ』まで入っている。
「テロには屈しないってか?まあ、元々、この国には何も期待はしていない。
気を取り直して、この日本のダンボールを開いてみよう」
『コシヒカリ』と書かれたダンボールを開けてみるとそこには当然のごとく稲の
苗が整然と並べられている。緑が目にまぶしい。
「日本人は石油で米が育つとでも思っているのか?流石、ロシア近く(北海道)
で米を生産する民族。頭がおかしい」
当惑気味のイラク人は辺りにあるダンボールを次々と開け始める。
フランス→ワイン ロシア→ウォッカ イギリス→ウイスキー
ドイツ→ビール、ハム、ソーセージ
各国の名産物が伝統の匂いを漂わせながらぞくぞくと顔を出す。
「なんなんだ、こいつらは!イスラムにケンカでも売っているつもりか!
『オチュウゲン』じゃねえんだぞ!・・・ん、あれは一体?」
男が目に留めたのはあまりに大きなダンボール。どうやらイタリアからのもの
らしい。開けてみればそこにはコンドームが箱一杯に詰まっている。
「おや、下に別のものが入っているのか?」
コンドームを掻き分けると下からイタリア人が出てきた。イラク人はその男に
サッと銃口を向ける。すぐに降伏のポーズをとるイタリア人。
「いや、勘違いしないで下さい。我々イタリア人はイラク人に対し敵意を
持っていません。だからこそ、このコンドームをイラク人女性に送ったのです」
銃口をそむけないままイラク人がイタリア人に問いかける。
「それは分かった。しかし何故、中にお前が入っていたんだ?」
「私はおまけです」
「アホか、お前は!撃ち殺すぞ!」
「自分でプレゼントしたものを自分で使う。そして出来るだけ早くプレゼント
したいからついて来た。私は間違っていない。殺すなら殺せ!イタリア人の
死に様を見せてやる!」
「どういう逆切れだ、それは。どうしてお前らは勇気を出す状況をいつも
間違うんだ!」
二人がすったもんだしているとその背後でダンボールの山がガサゴソと
動き出す。やがて中からたくさんの中国人が這い出し、そこらにあった
援助物資を次々と懐におさめ始める。
「なんだ、お前ら!」
イラク人に気づいた中国人は皆、自分を指指しながら
「エンジョブッシ、エンジョブッシ」と繰り返す。
「喋る援助物資なんてあるか!」
怒鳴られた中国人達はしばらく互いに顔を見合わせた後、
「ソニー、ソニー」とまた自分自身を指指す。
「ソニーが中国人のアイボなんて作るか!」
「パナソニック、パナソニック」
「そういう問題じゃねえだろ!」
完全に煮つまったイラク人は天に向けて銃を乱射する。
「なんでこうなるんだ!神は我を見捨てたのか!」
彼は思い出すべきであった。イスラムの神は自分を
信仰する者には常に試練しか与えなかったということを。
イラクの空は今日も青すぎるぐらいに青かった。