(
>>998つづき)
私の不満そうな表情を見たローデン教授は、次のようにも問いかけました。
「日本の植民地支配を非難する韓国人の留学生の一人が、自分の父親が
東京帝国大学出身であると自慢げに話した。これは、暗黙のうちに
日本が導入した文明のシステムを評価していることになる。
本来なら、東京帝大を卒業した父親を非難すべきではないか」
こう言われてみると、確かに東京大学はもとより京都大学、早稲田大学、
慶応大学を卒業したことを誇りにする韓国人は少なくないのです。
当然韓国の側に立ってくれると思った第三者のアメリカ人学者の発言は、ショックでした。
こうして私は1997年に『The doomed empire : Japan in colonial Korea』
(滅亡の帝国:日本の朝鮮半島支配)を、英国で出版しました。
日本の植民地支配下での女性と教育問題を、学問的に整理し、感情論でなく
客観的に理解する素材を提供したいと考えたからです。
当初の意図とは異なり、指導教授の理諭と主張が盛り込まれました。
この本は、韓国で出版するのはまず不可能でしょう。
また、日本で出版しても、誤解を受け韓国では「親日派」と非難されかねません。
韓国で生活できなくなるかもしれません。それをあえて覚悟したのは、近代史を
めぐる日韓の対立を解消し友好な関係を築くのに微力ながら貢献したいと考えたからです。