ファシズム体制を語り尽くそう

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514世界@名無史さん
<無責任規定について>
ヨーロッパの主な君主国には明確な無答責規定がある。
オランダ王国憲法(1815年)
・第55条「国王は不可侵とする。大臣が責任を負う」
デンマーク王国憲法(1958年)
・第13条「国王は、その行為については責任を負わず、その一身は神聖とする。
大臣は、政府の行為について責任を負う。大臣の責任は、法律の定めるところ
による」
ベルギー王国憲法(1831年)
・第63条「国王の一身は不可侵であり、その大臣が責任を負う」

大日本帝国第3条の神聖条項による天皇無答責論は一種の拡大解釈である。
そもそも条文において明文化された無答責規定がないということが重要。
大日本帝国憲法における天皇の地位は、西欧・北欧の立憲君主制よりも
絶対君主に近い物である。
西欧・北欧の立憲君主制論(=国民主権と両立)を前提とする議論には
そもそも無理がある。

また、帝国憲法55条の輔弼条項を根拠とした輔弼機関答責論も、そもそも
戦前日本の統帥権の独立というシステムを無視した議論である。
軍令機関(参謀本部・軍令部)の長は、天皇に直属の幕僚長であり、最高命令
(大陸命・大海令)を下す権限を持たなかった。(権限は天皇)
帝國憲法55条は、軍事命令発令の所在について全くふれてない。統帥権が政府から
独立しており、かつ、幕僚長に最高命令を下す権限がないのであれば、
その責任は最高統帥者たる天皇に帰着せざるをえない。

つまり、天皇の憲法上の機能からの責任否定論は、ともに西欧流の立憲君主制
を前提とし、むしろ大日本帝国憲法が運用されていた政治体制の実態にはそぐ
わない議論であるといわざるをえない。
(昭和天皇の軍事思想と戦略、山田朗、校倉書房)