《《 熱く書け!架空の歴史。パート2 》》

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153時空”管理”官
最終章 亡命者達の挽歌 エデンからの追放

我々は果たして生き延びることができるんだろうか、とリリオカラニ2世・・・美貌の第6世代の女王は
考えていた。
祖国ハワイが滅亡したのは15歳の自分が産まれるよりも前のことだ。
自分は・・・というよりも宮崎の高千穂に居る亡命ハワイ人の多くはハワイ陥落の際に自分のDNAを
冷凍保存して地下に埋めておいた者達のクローンだ・・・生き延びた第4世代達は関東やアメリカで
亡命生活を送っている・・・

宮崎陥落の日。
日本共和国は一つの決断を強いられていた。陸上自衛軍の総力に当たる43万を投じていながら、
幻獣の勢力は実に、1400万。戦力比、およそ1対32.

後の熊本防衛戦では戦力比1対36と言う絶望的な戦いで、完全な包囲下にありながら、開戦から
三ヶ月持ちこたえた上に、最後の熊本空港防衛戦後の本土山口への脱出作戦を行うことが出来た
(他の時空においては三ヶ月後、人類の圧勝となった世界や幻獣との和平が成立した世界などが
存在することを本官は職務上、付け加えておく。)のは極端なまでの対中型幻獣戦思想によるもの
であったのだが、それを立案した九州軍総司令は学兵であり自衛軍の統帥権は握ってはいなかった。

結果・・・政府は忌まわしき反逆者にして第二次世界大戦の原因、生物兵器を投入することを決断した。

第五世代、それが兵器に関せられた名前である。
そして、エデンは、今まさに焼き払われようとしていた。
154時空”管理”官:03/10/14 05:18
志村は善行と話したことを思い出していた・・・・肝臓が痛む。
「はい、いいえ、志村大佐。私は必ずや朝鮮の地を踏もうと思います・・・」
「そうか・・・・気分はマッカーサーだあな・・・・さて、その為には、どんな努力をすれば良いのかよ?」
「そうですね・・・さしあたって九州の防衛、沖縄奪回、そして、その後の厭戦的な関東の世論・・・政界の浄化
及び旧弊の多き藩閥の打破、ですか。挙国一致政権が欲しいところですね。」
「・・・少尉。国家反逆罪に問われかねない発言はいただけませんな。・・・失礼、」若宮が割って入る。

「・・・九州には何がある?」志村は何かを持ちかけようと思っていた。
「・・・熊本と言う【絶対結界】とやらがあるという奇妙な発想に基づいた奇妙な戦線を形成しようとする動き
は知っています・・・・」
「いや、違うだろ、確かに、おまえさんたちゃ転戦することはあるだろうけどヨ、実際に、他に戦場になり
戦闘を行いやすいのはどこだぁよ?」
「・・宮崎ですね。過去の防衛戦争ではかろうじて沖縄の恒常的陥落と鹿児島の陥落だけで済ん
で居ますが・・」
「・・・宮崎と言えば【神の国】【神話の国】だぁな・・・・・高千穂に何があるか知ってるか?」
「・・・・・・ハワイ王国亡命政権、ですね。・・・もっとも、前政権が幻獣戦後、我が国が生存していた時の
ハワイ領有を主張しよう、という発想に基づいて作られた政府ですが」
「そうだ。地域振興や米軍の本土上陸作戦の抑止の意味もあったんだが・・・・これを政府は見捨
てることに決めた。」
「・・・・・・前政権の遺物は焼き払いたいと?・・・クソッ大統領はどこまで無能なら気が済むんだ!」
若宮は珍しく意気巻いている。
155時空”管理”官:03/10/14 05:28
「さて・・・俺は一応、芝村だ。宮崎で敗北した場合のケーススタディの中に、「学兵創設法案」「熊本要塞化」
法案が有る。このままだと確実に九州は捨石になるだろうよ。ここで俺達がやるべきことは何だろな?」
「はい、いいえ、何でもねぇよ、とは貴方のバンドの十八番のギャグトークでしたが、九州を死守して、
守り抜くことでしょう・・・そして、そのモデルケースを示す必要があるでしょう。」
「そうだ。既に政府は第5世代・・・二度と反乱できないように制御が掛けられた幻獣化人類兵器を投入することを
決定した。善行。お前は政府上層部から疎まれている。そこで志願し、救出作戦に従軍するんだ。
俺達も込みでな。」

「・・・・・そして、成功すれば、熊本へ、ですか?」
「・・・俺はそこまで体がもたねぇよ。俺は初期ガンでな、助かろうと思えば助かるんだが、そろそろ仲間のところへ
行こうと思ってる。」

「志村大佐!」
善行はまっすぐに目の前の志村を見据えた。
顔のあちこちに細かい傷が残り、何故か禿げ上がった頭には皺が深く刻み込まれている。
よく日焼けしたその体は、まさに歴戦の古兵といった感じだ。

「そんな怖い目で見るなよ・・・・・・・ウソだ。宮崎戦に加わってると治療の時間が無い。
時間的にどうしても手遅れになっちまう、しかし命には換えがたいプランなんだぁ。頼むわ。」
「・・・・分かりました、下関についたら陳情してみましょう。」

そして、今俺達は高千穂に居る。
リリオカラニ2世達、第6世代のハワイ亡命政府の者には善行が【鬼善行】と呼ばれる所以となった
訓練を善行が朝鮮で戦っている期間に行うように求めておいた。
高千穂に住む沖縄からの難民については、政治的に問題が無いことから、密かに大分や福岡へ
避難させられたが・・・・・目の前に工場ほどの大きさの幻獣が迫る。ヒトウバンだ。
・・・・一番胸糞悪い相手だ。しかも三体か。
切り取られた顔が張りついている・・・・しかももとの人格のまま生きて幻獣にはりつく・・・・そいつらが
一斉に「殺して!殺して!」と叫ぶ・・・・容赦無く切り殺す。
・・・成仏できれば幸いなのだが・・・・・・・・撃墜数、292.