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片耳が聞こえないため音の方向がわからない警備員:
あれは入社当初、オフィスに集合し、イベント警備のミーティングを受けたときのことだった。
説明を聞いてるときに近くからスヒュー、スヒィー、とものすごいボリュームの寝息が聞こえてきた。
夜勤の人が仮眠とってるんだろうか? と思った、近くには仮眠に使えそうなソファなどなく机が並ぶだけ。
首を振ってレーダーのようにして音源を確認するが、音源と認識した場所では部長が黙々と事務作業をしてるだけ。
もしかして、誰かが机の影でダンボールひいて寝転んでるんだろうか?
締め切り間際のゲームソフト会社じゃあるまいし…とんでもない会社に入ってしまったと思ったものである。
俺は基本的に現場組なのであまりオフィスに入ることはないのだが、そのたびにものすごい寝息を聞いた。
そして半年くらいたった頃、ようやく真相を知った。音源はその部長であった。
喉が悪くて普段からそんな息になってしまうらしい。
脳内データベースには無い事態に遭遇すると、こういうトンチンカンな勘違いをしてしまう。
この前、その部長がアイスを差し入れてくれた、感謝感謝。それで思い出したのだった。