真珠夫人21 とみこ現る!

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612青木恨み節
彼女は蜘蛛だ。
美しく華麗なる蜘蛛。
恐るべき毒牙を持った蜘蛛
彼女に捧げた僕の愛も情熱もただ彼女の網にかかった羽虫の身悶え。
美しい蜘蛛は犠牲者の身悶えを冷ややかに楽しんで見ていただけ。

花のサロンで彼女は甘い微笑みを振りまき、僕を魅了した。
取り巻きの崇拝者達の中から、あなただけに、と特別誂えの腕時計をくれた。
彼女の白い肌から外されたその腕時計は
そのまま僕の手首に巻かれ、僕は天にも昇る気持ち。
これこそ彼女の愛の証。
天女の羽衣を手に入れた漁夫のように、僕は毎日うきうきしていた。

だがある日、僕のそうした自惚れは、そうした陶酔は、
めちゃくちゃに踏み潰された。
613LIVEの名無しさん:02/05/03 14:30
パッと見
青木君はアジアの留学生かと思いましたわ
614青木恨み節:02/05/03 14:32
〜回想シーン〜
男「チャイコフスキーはいいねぇ」
青木「ええ、そうですね。・・・あの、その時計は?」
(中略)
男は、青木が瑠璃子にもらった時計と同じ時計をしている。
聞くとある人にもらったもので、世界に一つしかない、という。
〜回想シーン〜
全く同じ物だった。
文字盤のデザインといい、埋め込まれているダイヤの数や大きさといい、
彼女から贈られたあの時計と、寸分違わぬ同じ物。
彼女に選ばれたたった一人の者、
愛の勝利者と思い込んでいた僕の自惚れは木っ端微塵に砕かれた。
なんと、僕の大嫌いなOの奴が、彼女から同じ時計を貰っていたのだ。
615青木恨み節:02/05/03 14:33
嫉妬と疑いから、彼女を責めた。
それから僕は彼女から一切見向きもされなくなった。
サロンでも言葉をかけて貰えず、無視され続けた。
あなたなんか来なくても結構といわれているのも同じだった。

彼女が憎い。
心から憎いけれど、片時も忘れる事が出来ない。
もうあのサロンに足を踏み入れることが出来ず、僕はただ悶え苦しむだけ。
この苦しみから逃れるためには、
彼女を殺すか自分を亡き者にするか、二つに一つ。
616青木恨み節:02/05/03 14:34
氏んでやる。
氏ぬしかない。
青春の純情を弄ばれた恨みだ。
氏んで思い知らしてやるのだ。
旅に出よう。
旅先で氏のう。
どこか美しい湖のほとりで。