>>94 「女になれば、考えも変わる・・・ということか。お前も、一度女になって見ろ。世界が替わるぞ。物事の見え方が替わってくる。新しい発見の連続だ。
そう言う意味では、この経験も悪くはなかったかもしれぬ。もちろん、戻れるのであれば今すぐにでももどりたいが」
「答えになってねえだろ」
「そうか?」
「俺は、高杉と何があったかって聞いてるんだよ」
「しつこいな、貴様は・・・何もなかったと言っているのに。さては嫉妬か?男の嫉妬は見苦しいぞ」
「嫉妬じゃねえええええ!!!気持ち悪いこと言うな!!!!」ぽかっと桂の頭を殴った。しかし、以前に比べるとその威力はすこぶる弱い。
「ともかく、もう遅い。輪は回り始めたのだ。止めることなどできぬよ。・・・もっとも、結婚などと考えたことはなかったが・・・
というか、自分が嫁ぐ立場でなんて全く考えたことはなかったが」
「当たり前だああアアア!」
「こんな俺をもらいたいだなどと、あの方も奇特な方だとおもわんか」フフと、桂はさもおかしそうに笑った。その顔を見るのは、ああ、久しぶりだと思った。美しいとも。
「なぁ、銀時。俺たちは俺たちだ。それ以上でも以下でもない。昔も今もだ。替わらぬ関係があるのではないか。たとえ、もう二度と会えないとしてもだ」
大奥の御台所なんてたいそうな地位、ちょっとやそっとでは外に出ることはかなわない。
一度入ったら、ツレが死ぬまで(将軍が死ぬまで)、いや、死んだ後だってそうそうでれないだろう。
「いやいやいやちょっとまって。お前さ、子供産んだら男にもどっちゃうんじゃなかったっけ??何でずっと大奥ですみたいな事言ってンの??」
「う??ん。そうだな、まあ、今のはもののたとえだ。子供がいつ出来るか分からないし、もし出来なかったら一生このままか・・・。
いや、俺は男にもどらねばならないし、もどったらまた攘夷活動をするだけだ。和田月子がこの世からいなくなるだけだな」
「よく考えたらさ、・・・それってマジやばくね????もし、子供が出来ても、お前、置いてくの?それともつれて?どっちにしても両親いない子になっちゃうよ!
っつーか、将軍の子連れて行ったらお前ただの誘拐犯だからね!男にもどった暁には、切腹なんてモンじゃないよ、コレ」
「・・・血など関係ない。生みの親より育ての親がしっかりしていれば、子は育つ。それはお前がよく知っているじゃないか」
「そうだけど・・・って、おいいいいいい!!!そういう問題じゃない!お前、ダメだわ。全然ダメ!男として、女としてか?無責任すぎる!!
そして、なにより将ちゃんがかわいそうすぎる!!!」
といったところで、いきなりふすまが飛んできた。
「うっさいある!!!ねろ!!!!」
神楽がつり上がった目をしてふすまごとけっ飛ばしてきたのだった。
まあ、銀時の言うことには一理あるが、もとより、目的は違うところにあるわけで・・・なんとか桂は銀時をなだめて、落ち着かせようとした。
「も??銀さんはしりません。」銀時の最後のせりふはそれだった。
その日は、いきなりの、歌舞伎町からの嫁入り行列。
見物人も、警備員もすごかった。
見送りに銀時の姿はない。朝桂が起きたときからいなかった。
そんなものだろうな。と、昨日のケンカを思い出す。
そして、そっとみんなに笑顔で手を振ってからかごに乗った。
屋根の上で、その様子を見ながら、銀時は考えていた。
・・・あいつは、分かってるはずだ。
この結末がどういうものになるか。あいつは、子供を見捨てられるような薄情な奴じゃない。孤児だった俺のことさえ、あいつが一番気にしていたのだ。今でも。
なぜ、あいつがあっさりと結婚を受けたのか。
なぜ、あいつはこっそり腰に懐刀を差していたのか。
答えはひとつじゃねえの?