>>712 「あれ、それ、どうした?」
突然、銀時がきいてきた。居間から、キッチンの俺に声を掛ける。
一瞬、ヒャッと思った。な、何が??何かおかしいか??
「ああ、下のババアにもらったのか。あいつ・・・俺には何にもよこさねーくせに」
などと言っている。何だ、何のことだ??
あ、もしかして、割烹着のことか?
ええ??全く同じものなのに、気付くのか??どこかに名前でもあるのだろうか・・・
などと、割烹着をわたわた見ていたら、
「はあ?なにしてんの?」と言われた。
「あ・・・ああ」
「?」
なんか、怪訝な顔をする銀時、こういう時、銀時は本当に鋭い。神掛かった勘を発揮することがある。
さっきより、若干近づいてきて、言った。
「頭のどうしたってきいてんの」
「あ、頭・・・」
ぱっと、頭を抑える。
乱れているのだろうか。あ、ソファーに倒されたから・・・。
「風が強くてな・・・」と言って、キッチンの鏡を見に行く。
だが、映っていたのは、いつもと変わらぬ、自分の髪型。やや乱れてはいるものの、ちゃんと結い上げて赤い簪で止まっている。
「そんなに、乱れては居ないと思うが」
そんな俺に、更に近づいて銀時は言った。
そんな目で見ないでくれ・・・
既に、俺を疑っている。
「青い玉。どうしたって言ってんの」
「青い玉?」
は・・???
青い玉?玉ってなんだ。分からない。
きょとんとした俺に、ものすごく嫌そうな顔をした。
「ふーん。」と、俺の顔をじろじろ見る。
で、
「風が強かったから、飛んできたの?」
「?」
「飛んできて、勝手に刺さったの?」
「??」
「それとも、転んで刺さったのかなぁ?」
「???」
銀時、わからないよ。
からかうのは止めてくれ。
言いたいことがあるなら、言ったらいいだろう。
そっと、俺の後ろ頭に手を伸ばす。
「!!」何か、頭から抜き取った。
いつもの簪かと思ったら、髪が堕ちてこないので違うんだろう。
銀時が、ものすごく怖い顔で、俺に、それをつきつけた。
「こ、れ、」
「!!!!!」
目の前には、見たこともない、
青い玉の付いた、簪??????
「何?今知ったの?」
は・・・・
息が出来ない。苦しい。
ドクドクドク・・・・・
心臓の音がうるさい。
「ふーん。知らなかったんだ。てことは、さあ。
自分で買ったわけじゃねえよなあ。もらったものでもないよなあ。」
くるくると、その簪をもてあそぶ。
ああ、もうだめだ。
こいつは、もう気付いてる。気付いていて・・・・
もう、正直に、言おう。
と思ったのに、言葉が出ない。
ああ。そうだ。
俺が買ったんじゃない。もらったわけでも。
勝手に、刺していったんだ。俺が、気付かないうちに。
高杉が????????
どうして。
どうして・・・・・
思考がぐるぐる回って、追いつかない。
ああ、あいつが来た時を、思い出してみれば。
「じゃあ、なんで」
あいつは、いつもの通りの態度だったじゃないか。
何しに来た、と言えば、
????“てめえに、会いに来たと言ったら、信じるか?”
それに対して、俺は、・・・
????“信じない!!用がないなら、出て行け!!”
って言ったんだ・・・
「頭についてんの?」
俺に会いに来た?なぜ?一体何で?
「誰が刺したの?」
狂ったような、口づけをして・・・
????“桂。桂、俺を見ろ”
????“言われなくても、見ている!”
見ていたじゃないか。分からないのか。
「何で、気付かないの?」
????“桂。聞いてくれ。一度しか言わねえから”
高杉、お前、なんでヅラって呼ばなかった?
お前が、桂なんて呼ぶ時は。
決まって、真剣な時だった・・・・。