>>668 でも、あれ?何か違和感を感じた。
桂が後ろを向いた時。きらりと青い玉が奇麗に光った。
桂の髪に、俺の上げた赤い簪以外の何かが付いていたことはない。なんだ?よく見ると、青い玉の付いた簪みたい。
でも、なんか、ものはともかく、お世辞にも奇麗に刺さっているとは言えない。枝が半分以上突き出た、それ。
「あれ、それ、どうした?」
一応聞いてみる。なんか、あの赤い簪以外があいつの髪に付いているのが嫌だ。違和感じゃなくて、不愉快だ。俺ってつくづく、嫉妬深いよなあ。
われながら。ああ、でもどうせ、これは、あれか、誕生日だから。
「ああ、下のババアにもらったのか。あいつ・・・俺には何にもよこさねーくせに」
まったく、あのババア・・・って、あれ、桂、どうした。
何か、せわしなく割烹着をわたわた見ている。
「はあ?なにしてんの?」
「あ・・・ああ」
「?」
なんか、おかしくねえ?こいつ。
・ ・・さっき、玄関からなかなか上がろうとしなかったし。
何か、ふわふわしてるし。
動揺しすぎじゃねえ?
「頭のどうしたってきいてんの」と言えば、
「あ、頭・・・」
ぱっと、頭を抑える。
「風が強くてな・・・」と言って、キッチンの鏡を見に行く。
おいおい。話しかみ合ってねえよ。
「そんなに、乱れては居ないと思うが」だって。
何それ。髪の毛乱れてるなんて言ってねーだろーが。
俺が言ってるのは、その、
「青い玉。どうしたって言ってんの」
青い玉の簪だよ。・・・なんだ、まさか・・・
「青い玉?」
!!!!こいつ、やっぱわかってねえ!!!!
なんで??なんでだ??
・・・あ、
あらためて、桂の顔をよくよく見ると、・・・・ああ、正面からじゃ見えねえんだ。
後ろ頭に、変な位置で刺さってる。計算か、そうじゃないかは分からないが。
・・・後ろから見ないと、分からない。
「ふーん。」
ってことは、なに?隠してることがあるよなあ。さっきから、こそこそと、その態度。
なあ、桂。
「風が強かったから、飛んできたの?」
「?」
「飛んできて、勝手に刺さったの?」
「??」
「それとも、転んで刺さったのかなぁ?」
「???」
ああ、やっぱり分かってない。
顔にハテナがいっぱいだぜ。
・・・だったらさあ、教えてやるよ。
そっと、その後ろ頭に手を伸ばし、頭からそれを抜き取る。
「!!」
それを、桂につきつけて、言ってやる。
「こ、れ、」
「!!!!!」
驚愕の表情。
やっぱりな。こいつ・・・
「何?今知ったの?」
青い玉を凝視する桂。
なんて顔で見てるんだ。・・・むかつく。
「ふーん。知らなかったんだ。てことは、さあ。
自分で買ったわけじゃねえよなあ。もらったものでもないよなあ。」
くるくると、その簪をもてあそぶ。・・・いえよ。自分の口で。
なのに、桂は真っ青な顔して、ぶるぶると震えだした。
何で言わねえの?