>>648 月子は妙な違和感を感じた。
「桂。聞いてくれ。一度しか言わねえから」
息が荒い。
「はあ、その前に、どけ!」
月子の、息も荒い。
「桂、本当のことを言う。・・・俺は、お前が、お前のことが、・・・好」
ど・・・・・っと、突然、高杉の頭が倒れ込んできた。
同時に、高杉の全体重が月子の全身にかかってきた。
「・・・・!!!!」
重い!!と、思った時、
「ヅラ??????!!まだ????????」
カンカンカン・・・と、けだるげな靴音がした。
と、カウンターの奥からすごい勢いでお登勢が駆けだしてきて、ガラガラと、戸を開けて怒鳴る。
「今、使いに出してるから居ないよ!もうちょっと待ってな!」
「ハア??ババア、てめ、何してくれてんだ!今日あいつ誕生日だぞ!人の奥さん勝手にパシリに使ってんじゃねえよ!」
「ああ??そういうことは、家賃払ってから言いな!!」
「くそババア!」
「何だって!じゃ、家捜しさせてもらおうかね!!」
「ハアアア??金なんかねーし!!」
といって、二人の足音が上へ消えていく。
その騒ぎで、ハッと高杉が顔を起こす。
「なんだ、重い、どけ・・・というか、なんだと言うんだ、貴様、変だぞ」
と言えば、聞こえているのか居ないのか、
「桂、聞いてくれ」という。
「だから、何だ」
「松之助を、頼む」
「!!!」
そしてまた、狂ったような口づけを交わすと、
何かに気付いたかのように身体を離して、
「・・・安心しろ、こんなことは、もうしない」と言った。
「当然だ」
「・・・しばらく、連絡が取れない。だが、俺のことは心配するな」
と、なぜか不敵に笑うので、
「はあ?何で俺がお前の心配なんぞするんだ」
と言ってやった。
そのとき、高杉は、やけに寂しそうな顔をしたと思う。
それから、ぱっと、体を離して立ち上がり、
スタスタ出口に向かっていった。
そして、
??????ガラガラ、ピシャン。
出て行った。
????
何だったんだ?
それにしても、と月子は思う。
“松之助を頼む・・・”あいつ、初めて、息子を名前で呼んだのでは無かろうか。
真意が分からない。
気付いたら、追いかけていた。
出口の戸を開けると、・・・そこには誰もいない。
忽然と、消えていた。
え・・・・
カンカンカン、と、お登勢が戻ってきた。
「月子、あんた・・・・・!!!」
お登勢が、月子を見て、息をのむ。
「え?」
視線の先が、身体であったので、つられて、下を見る。
「????????っ!!!!!!」
血だらけの、
割烹着だった。
それは、まるで、真っ赤な着物のよう。
一面が、赤く、染まっていた。
夕暮れは、夜に変わった。
余談 最後の誕生日 G
今日は、ヅラの誕生日!
前々から計画していた。
多分、女の姿ではこれが最期と分かっていたから。
申し訳ないけど、今日は、どうしても二人で(と子供達で)祝いたかったから。
早い時間から、新八と神楽にはお妙のところに行ってもらっている。
今日は、特別なんだ。
今日は、桂に伝えたいことがある。
渡したいものも。
それなのに、
あのババア。帰ってくるなり、ヅラに買い物言いつけやがって。
最近のあいつの横暴さには頭くる。今度、がつんと言わなきゃな。
一度様子を見に行ったあと、金時(俺と桂の子供)がぐずったのでミルクをやった。
と、同時くらいに、とんとんと、階段を上がる音がする。
「すまん、銀時、遅くなって」
ヅラが戻ってきた!!
玄関にいる・・・が、なかなか上がってこない。
ん?何かあったのかな。