とってつけたような高杉の物言いに、桂は「何を考えている?」と怪しんだが、高杉はいつものいやな嗤いを浮かべながら、
「ただ、将軍の恋路の邪魔をしたいのさ」 と言った。
何処まで本気か分からないし、次にあったら斬ろうと思っていた相手だが、このままこいつらが何か企んでいるのであればそれを探って阻止することも、
今の自分にできる精一杯のつとめの気がした。
将軍の命を狙っていることも、その為に自分を駒にしようとしていることも容易に想像が付いたからだ。
ここで騒ぐのは得策ではない。様子をうかがうのが先決だと思えた。
それに、あれだけの別れ方をした割にひょうひょうとした態度の高杉に、昔の高杉の鱗片を見た気がして、
(そして、刀もないので)斬るのは後回しにして、その申し出を受けることにしたのである。
来てすぐのことだが、風呂に入りたい・・・と言った桂に、来島が女湯を案内した。鬼兵隊は結構な人数で、女性も僅かながらいた。
しかし!もともと男であった桂はどうにも女湯になんて入れない!どうしても男湯にはいると言って、男湯で脱ぎかけたとき、大騒ぎになった。
万斎があわてて止めに入って連れ戻したが、男湯にはいると聞き入れない桂に高杉の私室の風呂を貸りるよう進めた。
おどろくほどあっさりと、高杉は「いいぜ」といって風呂を貸した。