>>587 「あ、・・あれは、やつが・・・どうしてもと言って、土下座して頼み込むから、仕方なく、一回だけしただけだ・・・。喜んでなど、断じて、いない!」と言えば、
「へえ、じゃ、俺も同じことして頼み込んだら、銜えてくれんのかなぁ」
空恐ろしいことを、高杉が言う。そんなこと、しやしないくせに。
「どうかな。試してみただろうだ」する気もないくせに。できるなら、してみたらどうだ。
「フン・・遠慮しとくぜ」ほら、やっぱり。プライドの高い貴様は、俺ごときに懇願などするはずもない。そんな価値を、俺に見いだしてない。そんなこと、分かってる。・・・。
のそのそと、着替えをして、あいつが抜き取った簪を手に取った。
畳の上に無造作に置かれたそれ。
そういえば。
あのときも、こいつは簪をとったっけ。
・・・その前に、
ふと疑問が浮かぶ。
前に、これを持っていってしまったことがあった。