「気が変わった。出ていってくれ」
「そんな・・・今日は偉く気が変わる日どすなあ・・・」
「金は払うから、頼む」と言えば、女は静かに出ていった。
「たまに来ては、舐めてもらうんだ」というので、何だかかあっとなった。その様子を、さもおかしそうに見て、「傷を」と、最後に付け加えた。いかにも奴らしい言い方だ。
「お前さん、その様子だと銀時に会わなかったようだな」
「あ、ああ・・・高杉、ここから電話をくれたのか?」
「まあな。下でちょっとばかり奴と飲んでいたからな」
「!!!!二人でか・・・めずらしい」
「まさか。たまたま会ったんだよ。俺は違うツレがいる」
くるり、と、煙管を回しながら言った。ああ、それ・・・使ってくれているんだな。その視線で分かったのか、
「俺は、もうちっと派手な色が好みだが」という。
知ってるさ。知っててあえてそれにしたんだ。
「貴様は何もかもが派手なのだから、ひとつくらい落ち着いたモノがあった方が良い・・ちょっとはおとなしくしろ
・・・その方が、世の女のためだ」
と言ってやった。
ふうん、と生返事をしてくるくるとまた煙管を回す。いっこうに、その言葉の意味も分かってない様子。
手持ち蓋差な感じだ。それに、何だか違和感を感じていたら、煙管を片手に持っている割に吸うそぶりを見せない。
・・ああ、まさか、この傍若無人な男が、俺の身体を気遣っているのか。
「なんで銀時がこんなところにいるんだろうなァ」クククとのどを鳴らす。
「おおかた・・・不満なのだろう」
「相手してやってないのか」
「・・・子供がいるのに」ついつい腹をさすってしまう。
「へえ。随分大切にしているんだな」部屋に漂う空気が変わる。幸い、ふすまの近くに座っている。奴がこっちへ来る前に逃げることも可能だ。
「子供が出来た時の、銀時の喜び方は普通じゃなかった。貴様も分かるだろう。・・・あいつは・・・」
「一人もんだからな。血のつながりを欲してやまないんだろうよ」
「ああ。・・・じゃ、俺は帰る」なるべく直前までそのそぶりを見せずに、分からないよう立ち上がった時だ。
「待てよ」
手首を捕まれる。
・ ・・・思っていたより、奴の動きの方が早かった。
「はなせ」
「一度この部屋に入って、何もしないなんて野暮じゃねえか」
「は・・・貴様」
ぞっとした。その目もそうだが、俺の腹に手を当てている。