「あんなに美しい女性なのに、騎兵隊でもどうにも男湯に入りたいと言って」
ガシャン!!!おっとっと・・酒がこぼれちまった。妓がすかさず拭いてくれる。気が利くねえ。
「大丈夫ですか、坂田さん」武市がおしぼりをくれた。それを見て、おかしそうに万斎が笑っている。本当にいやな奴だ。
「・・・まあ、それで、仕方がないので、晋助の部屋にある風呂をすすめたでござるよ」
!!!!
「個室に風呂が付いているのが晋助の部屋しかなかった故」
はっと、反射的に高杉を見た。チッと舌打ちし、睨むようなまなざしで万斎を見ている。
「それである時・・・」
「万斎」
高杉が止めた。
「それくらいにしておけ」
そして、ついっと、隣の妓を引き寄せて、耳元で何かささやく。みるみる妓のほほが赤らむのが見えた。ああ・・・
「俺は、上に行って来る。適当に飲ませてやってくれ」
その妓を連れ立って席を立った。
堂々としてやがるな????!!何か悔しい。
出口に近い、俺の脇を奴が通過する寸前、
「おーおー行って舐めてもらえ。失恋の傷でも何処でも」
って言ってやれば、とっさに、俺が木刀に手を置いていたのが分かったんだろう、鋭い殺気だけを残して奴が出て行く。
と、俺の近くにいた妓が、高杉に近づいた。
「高杉はん、今宵はわてを指名してくれたんじゃおまへんの」
「悪ぃな。気が変わった」そう言って、素っ気なく二階へ消えていった。
「何あいつ、何様?」
「昔は違ったのでござろうか」
「あいつの女関係なんて俺は興味ねえよ」くいっと酒をあおり
「つーか、写メとってやりゃよかったな。んで、ヅラに・・」と言いかけて、はっとなる。
万斎を見ると、にたり、と笑っていた。武市は相変わらず表情が読めない。