万斎が、仕方ないといった表情でため息をつきながら俺を促す。
「まあ、立ってないで座ったらどうでござる」
妓の手前、言葉に従った。目は高杉をにらみ据えたままだ。
テーブルを挟んで、向かいに高杉。右に武市。左に万斎。俺は一番入り口に近い席だ。
・ ・・・沈黙。
そのうち、高杉が隣の妓に、もう一人あいつのとこに付けてくれ、と言った。
すぐに、さっき俺のとこにいた妓がやってくる。あ、忘れてた。
「あ、ごめん。そういや何も言わずに席替わっちゃって」
「かましまへん」
そのすきに、万斎がさっき行きそびれたトイレに立った。
悠々と、高杉は煙管をくゆらせている。奴にしては偉く地味だ。妙な違和感を感じる。
「なんか、似合わねえ色合いだな」
「・・・そうか。まあ、感性は人それぞれだからな」ふう・・・と、気にする様子もない。
何が哀しくてこいつらと飲んでるのか。酒がまずくならぁ。と思ったが、何分ただ酒だから仕方ない。別段話すこともない。酒を飲み出す。
沈黙に耐えかねて、か、それともみんなの疑問を代弁してか戻ってきた万斎が口を開いた。
「それにしても白夜叉殿。奥方がいながら、なぜこのようなところへ?・・・そう言えば懐妊されているのでござったか、それで」
ふむ。と、なにか一人で納得するような言い方にむっとする。
「あのね!うち夫婦仲は円満だからね!!そりゃもう毎日熱??い夜を過ごして・・」
うう。苦しい。ちらっと高杉を見ると、興味なさそうに酒をあおってる。あの飲み方。かわらねえなあ。
「それはそれは。はて。ならば尚更不思議でござる・・・」と、うたうように言ってくる。
しつけーなあ。そこはそれ、分かってるんだろうから、流してくれよ。
と、突然高杉が口を挟む。
「どうせ相手にされてねえんだろ」
「はあ?」
またしても、バチっと音がしそうな程視線がぶつかる。