万斎が又やってきて、
「ここは吉原。華の色を楽しむところでござる。血の色を楽しむところではござらんが」
どうする?と言っている。
「そんなこたァ、てめえらに言われなくても知ってらぁ。だがよ、どんな色に染まるかは、てめえら次第だぜ」
「・・・だ、そうでござる。晋助」部屋を振り返りそう告げる。
やっぱりいやがったか。
「・・・俺ァ別にどっちでも構やしねえ。派手でありゃぁどんな色でも」
奥から、かすかに奴の声が聞こえる。
ちっ・・・
回りくどいのはやめだ!
ばっと、隣のすだれをめくる。一瞬、緊張が走る。
いたのは、高杉と武市。やはり。
「よう、じゃあ、今日は野暮はよそうや。その代わり、ごちそうになるわ。邪魔して良いか?」
にやりと笑うと、いつぶりか・・・紅桜の一見以来の隻眼を見る。
その目が、すうっと細まり、
「身重の嫁さんほっといて、ただ酒たぁ、いい身分だな」
「種だけ付けて、女もガキもほっといて、放蕩している奴にゃぁかなわねえよ」
バチッっと音がしそうな程、視線がぶつかった。
「てめえの命が、酒代で買えるんだ。安いモンだろうが」
「てめえごときに売れる命じゃねえけどな」
ある種の殺気が立ちこめる。それは、鍛えた感覚でない妓にも伝わったようで。
「まあ、こわい」と、その部屋にいた2人の妓が口々に言う。