そして、その日の営業、お開き・・・って感じになった頃、
将軍が、「手を握っても良いだろうか?」と、ひどくまじめな顔で月子に聞いた。通常、お触り禁止だ。スナックだし。
でも、このときの将軍の顔が酷く真剣だったからか、今までのやり取りで好意を持っていたのか、不思議そうな顔をしながらも、月子はうなずいた。
すると、将軍は両手でその手を握り、その手を自分の胸に当てた。そして、頬を赤らめ、嬉しそうな顔をした後、また、ひどくまじめな目をして、言った。
「私の御台所になってもらえないだろうか?大奥へあがってほしい」 と・・・・
「は・・・」
その場にいた、一同、皆凍り付いた。
さて、その場ではてんぱった月子が、どうにも無理だと言っていたが、
将軍もさすがはというか、がんとして「返事は待つので考えてくれ」と言って聞かなかった。
そのため、返事は保留にされてしまったのだ。