ヅラは、仕方ない、と言う表情で、話し出した。
「浮気などしていない。ただ、松之助のことでたまに連絡しただけだ。・・・坂本から番号を聞いてな」
「そんなの初耳なんだけど?!!」
「お前に言うとうるさいと思ったからだ」
「何それ!!!っつーか、どんだけ頻繁に連絡してるの?!」
「ほら、うるさい。・・・そんなに頻繁ではない。それに」
ヅラは、お茶を一口飲んでから言った。
「妊娠が分かってからは一回も連絡していない」
は・・・。てことは、4ヶ月はしてないって事か。なんで・・・
「できれば、このまま、この子が生まれるまでは話さないでおこうと思っていた」
「・・・月子、前にも言ったがね。少しは信用してやりなよ。人の親になった男は、了見が広くなるんだよ、あんな男でもね」
なんだ。ババア、何か知っていやがるな。でもよ、・・・
俺は、坂本と目を合わせる。いいや、奴ならやりかねない。人の親であろうとなかろうと、あいつは自分の野望のためなら、何が犠牲になっても構わない奴だ。
たとえ、自分の子だとしても同じだろう。だから、俺は奴に松坊を渡さない。
それに。そうか。だから連絡しなかったのは、この時期になってもヅラが男に戻っていないのを不審に思われないためか。
・・・察しの良い高杉のこと、知ればきっと答えにたどり着く。子供を守るために、ヅラは連絡を絶ったんだ。
そう思うと、さっきヅラに怒った自分が馬鹿みたいだ。ごめん。
「お登勢殿・・・何度も言うようだが、世間一般の男はそうかもしれぬが、あいつは・・・高杉は違うのだ」
「そうかねえ」
「さっきは、ああ言っていたが・・・何をやるか、何を考えているか計りしれん」
「好きあって、子供作った相手に言う言葉じゃないねえ」
「ババア!!!!何言ってンだアアア!!気色悪りいこと言うんじゃねえよ!!」
「本当のことだろ?」
「いや、俺は奴を好きではない。奴は・・・ただの戯れだろう」
「そう思うんなら、あんたはまだ若いね。あたしはどう見ても、あの男はあんたに惚れてるように見えるよ。未だにね。ただ、素直じゃないだけさね。
それか、言えない事情があるんだろ」
何かを思い出すそぶりでそう言った。