>>43続き
それから、ややあって下のスナックに顔を出してみたら、うれしそうな将軍と、やんわりと微笑む月子の姿があった。
なんとそれから、将軍が三日と明けず(暇なのか??!!)来ていると言うこと。おかげで常連さんに申し訳ないわ・・・と苦い顔をするお登勢。
それはそうだ。貸切料金を払っているとは言え、将軍がいる席では一般の客を入れることが出来ない。儲かるけれど、常連を大事にするお登勢は複雑だ。
(だが、キャサリンだけは、「モウカリマ??ス」と、黒い笑いを浮かべて上機嫌だった。)
だが、もっと複雑なのは、将軍のお目当てが月子にあることだった。
それはもう見え見えで、自分達しかいない席で月子を独り占めしている。話している内容はくだらないとおもうが、何を話しても、将軍は嬉しそうなのだ。
また、密かに贈り物ももらっている。だが、あまりに高価な物のため、桂がいちいち断っているようだ。
(もらっておいて、売ればいいのに・・・などとも思ってしまうが。)
最近は慣れた物で、松平が店の中、外には数人の真撰組隊士がいるだけになっている。戦車のような物で武装することはもう無かった。
まあ、この道通りは、元々そんな広くもないし。物々しい武装では、逆にここに重要人物が居ますと言っているような物なので、無いに越したことはない。
たまたまその日。
銀時がスナックお登勢に立ち寄ったら、またしても将軍来店だった。
「銀時、今日は貸切だよ」と、お登勢に言われたが、
一回目の時に顔見知りになっていたせいか、
「かまわぬ。のんでいてくれ」と、快い将軍のお言葉をもらった。
苦笑いしながらも、「ありがとうございま??す」と、銀時がカウンターに付く。
ちら、と、将軍の席を見ると、微笑みながら酌をする桂の姿。頭には、自分のやった赤い簪。奇麗に結い上げている項は白く、色っぽさを感じる。
おいおい、なんでそんなうれしそうなんだ・・?と、疑問に思うのと同時に、なんだか面白くない。まあ、あいつ黙ってりゃただの美人だしな・・・。
将軍と何の話をしているかと思ったら、酒の席だというのにこの国の未来やら、天人の横暴を許さないようにする制度のことなど、なんだかな??と言う話をしている。
それで、嬉しそうな顔してんのか。あいつも、革命だのなんだの、好きだねえ??。ああ、でも、これはこれで平和な攘夷の一環と言うことか。などと、妙に納得した。
そして、その日の営業、お開き・・・って感じになった頃、
将軍が、「手を握っても良いだろうか?」と、ひどくまじめな顔で月子に聞いた。通常、お触り禁止だ。スナックだし。
でも、このときの将軍の顔が酷く真剣だったからか、今までのやり取りで好意を持っていたのか、不思議そうな顔をしながらも、月子はうなずいた。
すると、将軍は両手でその手を握り、その手を自分の胸に当てた。そして、頬を赤らめ、嬉しそうな顔をした後、また、ひどくまじめな目をして、言った。
「私の御台所になってもらえないだろうか?大奥へあがってほしい」 と・・・・
「は・・・」
その場にいた、一同、皆凍り付いた。
さて、その場ではてんぱった月子が、どうにも無理だと言っていたが、
将軍もさすがはというか、がんとして「返事は待つので考えてくれ」と言って聞かなかった。
そのため、返事は保留にされてしまったのだ。
そこから、桂はさすがに焦りを見せ始めた。「だから、早く貴様が元に戻す方法を見つけないから!!!」とどなり始めた。
「なんで??もういいんじゃね??の。将軍の子供を産めば直るんだし、玉の輿だし、一石二鳥じゃん」などと軽くあしらえば、
さらに怒り狂って「そんなこと、できるわけなかろう!!」ああああ??????と絶叫、悶絶。
そんな桂を横目に、どうしたもんか・・・と銀時もまじめに考えていた。
後から考えれば、危険な奴がいたのを俺は忘れていた。と、銀時は後悔することになる。