「松坊を心配してなかったら、わざわざ危険を冒して病院に行くかい?追われる身なんだろ、高杉という男は。あんたもか」と、挑むような眼差しで見る。
ああ、このお方は知っている。晋助の正体も、拙者達のしていることも。
ありがたいことだ。その上で、こう言ってくれている。
「しかし、しかし・・・」
桂はまだもごもごと言っている。
「入院費だって、くれたじゃないか。馬鹿みたいな金額だけど」
「あっ」と、突然桂が思いついたように言った。
「万斎殿。例の、あの金、持って帰ってもらえないだろうか。前、温泉でお会いした時は、銀時が居て・・・その、奴には内緒にしているものだから。
頼めなかったが、今日、持っていってくれると助かる。いくらなんでも、多すぎる。持っているのも怖い」
金、ときいて、キャサリンがキラーーーン、と目を光らせた。
ああ、なるほど。事情は分かり申したが。
「せっかくもらったもの故、定期にでもすればいいのに」
「だから、銀時にみつかったら大変なのだと言っている!」
「良くわかりもうさんが、いらぬといわば、あい分かった。ただ、今日は何分ちょっと・・・どうにも飲みに来ているだけなので、
あんな重いものを背負ってこの夜道、いくら難でも危険すぎる故・・・あとで、使いを出しますよ。それでよろしいか」こくりと頷く桂。
「あ、正直に言うと、その・・・十両だけ使わせてもらったのだ。すまない」
「だから、全然構わないと言ってるでござる。あれは、不器用なあの人なりの愛情故」
「愛などと!」突然桂が声を上げた。
「あやつがこの俺や松之助に愛情などあるものか!」
・ ・・と、なにやら貌を紅くして、
「いつぞやの娘にしたように、あやつの気まぐれや戯れに起きたことだ・・・それか、利用するためにしたことだろう。愛情など、あるはずもない!!」
ええええ?何この人。ここまで言って、この鈍さ。お手上げでござるよ??。お登勢殿も、すっかりあきれ顔だ。