「いやいや、お登勢殿。お言葉を返すようで悪いが、奴は、そんな優しい者ではありません。人の心につけ込んで、その心を利用する輩。
病院に来たのも、何か計画の一環で、松之助には死なれたら困る利用価値があったのかもしれぬ・・・そして、この子にも」そう言って、桂は腹をさする。
「何をするか、わからん男だ。関わり合いになりたくない」
「月子・・・」
「あの人は、そんなことしないでござるよ」・・・多分。確信はないけれど。
「わからぬ!知らぬうちに奴の駒にされるのはごめんだ。この子も、あの子も」
そう思っていたでござるか。・・・なんとも伝わってないでござるな。男同士で、幼なじみ。過ごした時間の長さが帰ってあだになったようだ。
晋助の愛情は、この人に全く通じていない。どう言ったら、分かってもらえるのだろうか。
「あの人は、どうでも良いと思った者と、お茶を飲んで話をするような方ではござらん。お登勢殿とそうしたのは、あの人なりに、筋を通そうと思ったからに違いない」
「そうだねえ。月子、あんたも聞いただろ。あいつは、天の衣を一生隠したいと言っていた。あんたを、ホントは誰にも渡したくないという気持ちがあるんだよ」
「・・・・」